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再会
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遊歩道から続く開けた広場。その端のベンチに座る若い女性と、傍らに立つ年配の女性。
血縁者だろうか、二人は顔立ちがよく似ている。
年配の女性が南倉たちに気付き、若い女性に呼び掛ける。上げたその顔を見て、確信したユキトは叫びだしそうになった。
この感情を説明できない。とにかく胸の奥から強いものが突き上げてくる。
世界が一瞬、止まった気さえした。
「稲田、さ…」
数ヶ月ぶりに会った大好きな人の名を、御曹司は喉が詰まってきちんと呼べない。
狐につままれたような恋人に南倉は話しかける。
「俺の名刺を渡してて良かったよ。彼女の親戚の人が連絡をくれたんだ。肩書きもたまには役に立つね」
そうだ、南倉は稲田の故郷を訪れていたのだ。ユキトは動揺する頭の片隅で思い出す。
「病院のテレビで朝霧夫妻の訃報を知って来てくれたんだよ。…遺されたキミを心配して」
ユキトは固まる。
そして、この場所に連れてきた南倉の意図を知った。
稲田は未だ、若い男が居る場所には近付けないのだろう。
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