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大切な人
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「稲田さんから坊っちゃんへお手紙です。お預かりしました」
「!!」
時任の言葉にユキトは瞠目する。急いで、しかし破らないように丁寧に開けた。
中には可愛らしい小花模様の便箋が一枚。彼女自身を彷彿とさせるそこには、御守りと同じ見慣れた字が書かれてあった。
『坊っちゃん、お帰りなさいませ!ご無事で何よりです!ご旅行は楽しかったですか?良い思い出はたくさん出来ましたか?お迎えもせず、申し訳ありません。
実は田舎の母が急な病を患いまして、稲田はお仕事を辞めさせて頂く事に致しました。せめて坊っちゃんのお帰りを待ちたかったのですが、どうぞお許し下さい。お土産も催促しておいて、勝手をすみません。
2年という長いようで短い間、稲田は坊っちゃんにお仕え出来て本当に幸せでした。もっとお傍に居たかったので残念でなりませんが…ありがとうございました!お世話になりました!遠くからでも、いつでも坊っちゃんの幸せをお祈りしております。どうぞ御体にお気を付けて』
――『ユキト坊っちゃん』――
そこまでだった。呆然と文字を追っていたユキトの両目から、ぶわりと涙が溢れた。
『一生付いていくと言ったのに、ごめんなさい。
私は貴方の事を弟のようにではなく、本当の弟と思って接しておりました。身のほど知らずにすみません。でもいつまでもいつまでも、そのくらい大切で、大大大ーーーーっ好きです!!』
ユキトは、泣き崩れた。
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