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その男
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翌朝、ユキトが学校に行くため玄関に向かうと時任が待ち構えていた。
「おはようございます」と遠慮がちに行われる挨拶に、「おはよ」とユキトは笑顔で返す。それに時任は眉尻を下げた。
「あの、坊っちゃん…」
「平気だよ時任さん。気にしないで」
やはり約八年も近くにいた時任にはユキトの一変した雰囲気を察せるらしい。
表向きは何も変わっていない。表情も仕草も。
でも、纏うオーラだ。腹の底で煮えたぎるドス黒い怒りが隠しきれずに、ユキトから発せられていた。
――ごめんね時任さん
稲田の件は、今度ばかりは兄のような執事には言えなかった。
犯罪を常に考えている今の自分と同じにはしたくなかった。巻き込みたくなかった。
しかし、ユキトは困っていた。
自分は高々もうすぐ15にしかならない子供。腕力も体力も無ければ知恵も無かった。
父母だけでなく稲田を輪姦した奴等も制裁したいのに、顔すら映っておらず見付けるにも手掛かりは声と体格だけ。撮影が狡猾だったとしか思えない。DVDを誰が送り付けてきたのかも気になるが、それよりもまずは見えている復讐が先だった。
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