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調査開始
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南倉がユキトを見る。何も感情が無いと見せかけて、その目の奥にひっそり宿る色に少年は気付いた。中学生ながら、その意味を彼は理解していた。
主に稲田や時任から向けられて来た真摯な目。敵意など微塵も無く、安心感を惜しげもなく与えてくれる目と同じだった。
だからユキトは、緊張しつつも「なん、ですか?」と問う事ができた。ずいぶん弱々しくなってしまったが。
「うん」と南倉は額から手を降ろした。明瞭な口調で告げる。
「稲田さんを大切に想っているキミ個人への嫌がらせ。金銭目的じゃない、私怨だよ」
ユキトは喉元に鋭利な刃物を突き付けられた感覚がした。全身がヒヤリとする。
「誰かに恨まれるような心当たりある?」と訊く目の前の大人にユキトは我に返ると、急いで首を横に振る。冤罪を掛けられた気分だった。
そんなもの、少しも無い。『朝霧グループ』の後ろ楯があっても、ユキトは学校でも家でも控えめで目立たないタイプだ。自分からトラブルを起こした事もない。
母の体罰で度々怪我を負って学校には行くけれど、クラスメイトは皆育ちが良いからか槍玉に挙げたりしない。生粋のお坊っちゃんにしては軽い性格の轟も、その点には触れない。やたら可愛い女子向けの絵柄の絆創膏はくれるが。
「…そう。怖がらないで、俺が必ずDVDを送ってきた犯人を見付けるから。その為には少しでも多くの情報収集が肝要なんだ。だから教えてね、稲田さんとはどんな関係?恋人同士?」
プラスされた再びの疑問にユキトは「違います」と、やっと返事をした。動揺していたけど、南倉の言葉を何故か疑わず信じられた。
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