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視界が急に歪んだ。いや、違う。これは……俺が泣いているんだ。
終わった。俺の恋が、今散った。
あんなに温めていたのに。こんなに好きなのに。この気持ちは届かないのか。
強く目蓋を閉じて、涙をこらえようとするのに――駄目だ。
駄目だ。出てくる。勝手に、出てきてしまう。
誰かが腕を掴んできた。そのままどこかに誘導される。きっと……三人のうちの一人だろう。
そうだよな。こんな、校門の前で男がさぁ。涙をだーだー流していたりなんかしたら、怪しいよなぁ。
すまんなぁお前ら。あんなに邪魔扱いをしたのに。それなのにこんなに親切にしてくれてさぁ。
ああ、もう本当に、さぁ。止まらないわ。涙が。
どうして俺は優斗を好きになったのか、今思い出した。
両親が死んだあの日。十二歳の、冬。
ずっと泣いていた俺に反して兄貴は全く泣かなかった。親戚連中からも、冷たい子だね、なんて言われて。でも、それでも泣かなかった。
俺も不思議だった。どうして泣かないのか。あんなに家族全員で仲良かったのに。突然死んでしまった両親を恋しがる気持ちはあるはずなのに、と。
きっと一人で泣いているんだ。そう思った。だから……葬式とか墓の手配とかが全部終わった夜、兄貴に言った。
泣いていいよ、って。そしたらさ。
我慢してはいないんだ。ただ、泣けないんだよ、って言われた。
肩が震えていて。それまで見たことがないくらいに悲痛な表情を浮かべていた。真っ青な顔色をして、唇の色も無くなっていて。そんな状態なのに、泣けないんだって何度も言われて。
泣かないんじゃあない。泣けない。
その言葉が胸に突き刺さった。じゃあいつ泣けるようになるのか、と思った。
どんな状態になれば、どんな環境を作れば泣けるようになるのか。安心して、胸の中身を吐き出せるようになるのだろうかと。
優斗の背中を抱きしめながら、俺が絶対に幸せにしてやるんだと心に誓った。その時からだ。
ずっと見てきた。俺を守ろうとするその背中を。優しく微笑んでくる顔。
すぐに伸ばせば触れられた手。いつの間にかそんな兄貴よりも身長が伸びて、ガタイも良くなって。
やっと並べたんだと、いや、むしろ追い越せたのだと思って……それからだ。好きだという感情が抑えられなくなってきたのは。
優斗は今、誰かを好きなのだろうか。素直になれる場所があるのだろうか。
俺は……俺じゃあ、駄目だったのか。
あげたかった。喜ぶであろう全てを、捧げたかったけれど。
この心は――
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