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冬の章二 色なき風
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「遊命のパスはなぁ……ちょっと、タイミング悪かったわ。璃青、自分のこと訊かれたと勘違いしてん。やっぱ兄妹やな。妙なとこが似てんで」
「どこが?」
「あなたも相当鈍いですよ?」
「俺も?」
標準語で指摘した可児に、遊命は気の抜けた返事をした。
“そういうとこや”と、突っ込みたい。どつきたい。
沸き上がる衝動を堪え、可児はあえてふざけた調子で言った。
「アナタ、ワタシニ『俺のこと好きなの?』ッテ、キイタアルヨ」
「ソ……ソウアルカ?」
「フツウ、キカナイアルネ。って、もうえぇちゅーねん。遊命は訊いてんけど、璃青はそれすらないねんもんなぁ。自分が恋愛対象になってるなんて、これっぽっちも思ってへん」
「あー……ね。…うん、あれだよ。他人に好かれたことないからさ、まさか、俺が?って思っちゃうんだよな。かと言って、俺から適当なこと言えないし…」
「俺からも言えへん。端から聞いてても、丸分かりぃやのに」
「そうなんだよねぇ……」
遊命は溜め息を吐くと、頬杖をついて上目使いで可児を見た。
可児の表情も同じく思案顔。
俺達がどうこうできるわけじゃないし、可児にとっては恋人の妹ってだけなのに真面目だね。
──ん? 恋人? ………まぁ、間違っちゃいないでしょ。
「なぁ、可児はさぁ、何で薔乃ちゃんが好きって分かった?」
「璃青が、処罰役を買って出る、言うてたからな。痴漢の被害者からしたら、全面的に肯定してくれて、その上罰まで与えてくれたら、そら恋心も芽生えるやろ」
「遊命もな」と、言おうとして、可児は口を噤んだ。
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