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冬の章三 稲妻は近くにありて轟かず
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教室に残っていた生徒はジロジロ見るし、廊下にいた二人連れは、眉を顰めてコソコソ耳打ちしている。
「帰ろか?」
ふぅ、と一息つくと、可児が顔を上げて言った。
「今日の今日だからな、目立ち過ぎんで」
「……ん」
「明日からは、別の場所でやった方がえぇかもな」
可児が立ち上がり、デイバッグを背負う。
「あ、私も帰るよ」
可児が、気遣って素っ気なくしたのに、辻も慌てて後を付いてきた。
「俺等と居ると、また肩書きが増えるんちゃう?」
「二股三股疑惑」
「それはそれで、面白い。“食い散らかしてる女”なんて経歴、今までなかったし」
「そーゆーこと言ってるから、反感買うんだよ」
「女子の前では、言わないよー」
三人は、揃って昇降口を出ると、校舎に沿って歩き出した。
「尚更だわ。言って、堂々と嫌われ……」
───バガンッ!!
金属のような、中身の詰まった重たい音。数十センチ後ろに何かが落ちる。
振り返るとそこには、スチールの缶ジュースが歪に転がっていた。
「この学校、火サス並みに色んなモンが落っこってくんねんな」
牛乳瓶といい、水といい、今度は中身の入ったスチール缶。
「下手したら死んでるよ」
辻が地面に転がる缶ジュースを拾い上げる。コンクリートと激しく接触したスチール缶は見事に拉げていた。
「これ、誰を狙ったんだと思う?」
一瞬の間を置き、可児と遊命が同時に指を差す。
指の先には、辻。
「あ、やっぱ、私?」
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