アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
嫌いになれない
-
これは、いつかの話。
「ねえ、リノス」
「どうした?フレイラ」
街道を歩いている最中、不意にフレイラは立ち止まり、それに気付いたリノスは振り返る。
血のように赤い、1つに束ねられた長い髪を風に遊ばせ、不思議そうな顔でフレイラを見つめている。
最初の不思議な出会いから、ずっと旅をしてきたが、それでも疑問だった。
「どうして、僕を傍に置くの?」
幾度となく聞いていた問いだが、どうしてもいつもはぐらかされてしまう。
だから、思った時に聞いてしまう。
「? いつも言ってるだろう?俺はアンタが好きだ。だから、傍に置いてる」
「具体的に、どういう事なの?」
好き、と口で言うのは簡単なことだ。
それに対して、リノスは態度が伴わない。
好きなのかも知れないことは分かる。
口付けに始まり、それこそ夜の営みも、求められているのは自分だけだ。
それでも、それだけなのだ。
別にデートがしたいとか、そういう事を言っているんじゃない。
多分、価値観が違うだけなのかもしれない。
だが、だからこそ。
「リノスの言う好きって、どういうこと?」
自分は、身体しか求められていないのではないか。
そう思い、フレイラは少し悲しそうに聞いた。
リノスは意図が上手く掴めないのか、眉根を寄せ考えているようだ。
「俺の言う好き、ってのは……なんて言えば良いんだろうな?」
うーん、と頭を捻るが上手く出て来ないらしい。
「……もういいよ」
これも、いつもの流れ。
やはり聞いたところで答えは出てこないのだ。
諦めて歩き出し、リノスを追い越そうとしたところで、不意に腕を掴まれる。
「うわあっ!」
「ちょっと待て、まだ答え言ってないだろ?」
そのまま引き寄せられ、体勢を崩しかけたフレイラはリノスの胸の中にすっぽりと納まる。
リノスはお世辞でもなんでもなくイケメンだ。
流石にそんな相手が自分の目の前に居るというのは心臓に悪い。
鼓動が早くなり、顔が赤くなっていくのは自分でも分かっていた。
「な、何するのさ」
「フレイラ、俺の顔を見ろ」
「な、なんで……」
赤くなっている顔を見られたくなくて、逸らしていた。
だが、嫌がっても、抵抗しても、顎に手を置かれ無理やり顔を向けさせられる。
「や、やだって……っん」
そのまま口を奪われ、そして口内を侵食していく。
ぬるりとした舌が入り込み、全てが混ざっていくような感覚に襲われる、
「んぅ、ふっ、あ、っ」
「…………」
何も言わずにリノスは口を離した。
銀糸が後を引き、太陽光に反射する。
「俺には、俺の思う好きってことが上手く語れないが、好きなやつとは離れたくないと思う。それが、フレイラ、アンタだってことなんだ」
真っ直ぐと目を合わせ、純粋にそう言うものだから、顔を赤くしながらも笑ってしまう。
「……ははっ」
「む、折角の告白を笑うなよ」
「ごめんごめん。……それが聞けて、安心した」
ホッと胸を撫で下ろす。
やっぱり、どれだけ不安になろうと、嫌いにはなれないのだ。
嫌いになるには、純粋すぎる。
「……さ、次の街まで早く行こう」
「おい、俺に聞いといてアンタの答えは……」
「え、何言ってるの」
フレイラはきょとんとした顔をすると
「好きじゃないわけ、ないでしょ?」
盛大の微笑でそう告げた。
これは、いつかの旅路の話。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 1