アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
出会い
-
そんな昔話を思い出し、また気分が沈む。
大人になった今でもできるだけ普通を装う。
彼女だろうが彼氏だろうが、求められたことだけを与える。
俺の欲は満たされないまま。
数えきれないほど、どうして俺はこうなんだろう、と答えの出ない自問自答を繰り返してきた。今日もまた回数が上乗せされた。
余計なことを考えたくなくて、グラスに残る酒を一息に呷ってはさらに強い酒を頼む。
いい感じに酔いが回ってきたところで、このまま帰ればすぐ眠れる、チェックしようと椅子を立ったとき。
「おにーさん、もう帰んの?」
後ろから声を掛けられた。
このバーにはわりと通っているほうだが、初めて見た顔。
撫で肩、華奢な身体に細い四肢、白に近い色で脱色された髪。それに負けず劣らず白い肌。切れ長の大きな黒目がちな目。少し厚めのぽってりした赤い唇。
俺に声をかけてきたのは、ジェンダーレスを具現化したような男。
「俺が奢るからさ、もう少し飲もうよ。ね?」
いいじゃん!とその男はほぼ強制的に俺を再び椅子へ座らせると自分も隣へ腰を下ろした。
やけに密着して座るもんだから、こいつもバイか、あるいはゲイか、ただの偶然か、変に探ってしまう。
「おにーさん、名前はー?あ、俺のことはショウって呼んで。花が咲く、の咲ってあるでしょ?あれでしょうって読むんだけどさあ、昔からよく女の名前と勘違いされてねー」
話の途中で酒を頼む器用さ、そして聞いてもいないのにペラペラとよく回る口だ。
「ねー、おにーさんってばあ。」
甘えるような声音に、ほろ酔いな俺はもう何もかも考えるのが面倒になった。
「ゆう…、って呼んで。優しいのゆう。」
「ん、おっけー。ゆう、ね。ゆうはさ、ぶっちゃけ恋愛対象男でしょ?なんか俺とおんなじ匂いするし」
「いや、バイ。」
不躾にズカズカと…呆れるよりも先に口に出た答え。
「バイってことは男でもイケるクチでしょ?ねー、俺今すごい寂しんだけど。ゆうは?寂しい??」
出された酒をチビチビと飲みつつこちらを見つめる視線は酔いのせいか、トロンと惚けている。
「別に…、そんなことないよ。」
同じようにグラスを傾ける。ああ、もう俺眠いのに。
「けど、さっきからずっと見てたけど、人一倍寂しいですってオーラ出まくってたよ。」
眠さに机へ突っ伏す俺の髪を緩々と梳くように撫でる感触が心地良い。
俺が返事をしないでいると、眠い?大丈夫?とひたすら聞かれ、それに返答することさえ億劫になった俺は咲の言葉を全て無視してやった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 13