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出会い
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「フル無視酷くね?」
間延びした咲の声を右から左へ、机へ突っ伏しつつ聞いていた俺はいつの間にか意識を手放していた。
髪を梳く感触にハッと顔を上げれば眠る前より幾分か賑やかになっていた店内。隣には驚いた様子で見つめる咲。
事態を飲み込むには暫くかかった。
「やっと起きた。気分どう?」
水飲む?と、差し出されたグラス。
有り難く受け取り、乾いた喉へ一気に流し込めば眠さで侵された脳も幾らかは覚醒した気がする。
「もう店出る?」
さっきっから一言も返事してないのに…心の強い奴。
「…かえりたい」
眠いし眠いし眠いし、それしかないけど。
「家どこ?送ってあげる」
「…や、ここから直ぐだし、いいよ。」
嘘。本当は徒歩20分はかかる。
けどタクシー拾えればそんなの問題ない。
誰かに家まで送ってもらうなんて迷惑はかけたくなかった。
「そっかあ、わかった。俺、もう少しここにいるけど、本当に大丈夫?」
「余裕余裕、ありがとう。」
人懐こい笑顔で、気つけてねぇ〜って手を振ってくる咲に手を振り返し会計をして店を出る。
この季節独特の生温い風が頬を撫で、夜の街の騒がしい雰囲気がいつもより鬱陶しい気がした。
大通りへ出て割増表示のされているタクシーへ手を挙げる。ハザードを点滅させ路肩へ停止すれば開くドアへ乗り込みマンションの住所を告げる。
運転手との会話が嫌いな俺はひたすら携帯を触るふり。
カメラロールを辿る指。
ふと、指が止まった。
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