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まだ、いてくれるだろうか。
必死に足を動かして、君島の元へ駆ける。
いつまでもうじうじとしているのはやめだ。はじめは、それほど深くない思いだった君島への想い。一緒にいるにつれ、君島を知るにつれどんどんと深くなっていった。
自分に会いに、放課後に必ず来てくれる君島。大して面白くもない話だろうに、毎日自分に話を合わせてくれていた君島。
優しくて、強くて、誰よりも繊細で、愛しい人。
嘘はつかない。きちんと、自分の思いを伝えたい。それで君島が、自分の事を友人としてしか見れないのならそれでもいい。その時は、君島が幸せになるために、いくらでも手を貸そう。
宗徳が花壇についた時、君島はまだそこにいた。後ろ姿にほっとして駆ける足を緩め、息を整えて君島の元へと向かう。だが、近づくにつれ、宗徳はそこにいるのが君島一人ではないことに気が付いた。
―――――風紀委員長。
君島の肩に手を置き、熱いまなざしで君島を見つめる安本がそこにいた。
もしかして、と思う。だが、宗徳はその二人の間に今入っていくのはなぜかはばかられた。思わず足を止めて二人を見る。
「…なあ、君島。俺は、やっぱりお前が好きだ。今までお前にしてきたことを棚に上げて何をって思うだろう。あれだよ。俺は、お前に嫉妬させたかったんだ。お前が好きすぎて、自分だけお前を好きなんじゃないかって不安だったんだよ。だから、お前の気持ちを試しただけなんだ。別れるって言ったのだって、引き止めてくれるかと思ってたんだ。でも、お前、あんな平凡な奴とずっと一緒にいるようになっちまったからなんでって悔しくて…。でも、やっぱりだめだ。頼む。俺とやり直してくれないか。お前だって、まだ俺が好きなんだろう?」
「…」
ああ、やはり。
聞こえてきた安本の言葉に宗徳の心臓がばくばくと早くなる。
やはり、安本は君島が好きだったんだ。あれは全て嫉妬して起こした行動だったんだ…。
その場から動けずに二人を見つめていた宗徳に、安本が気付いてふと目が合う。安本は宗徳を見とめると、その形のよい口元ににやりと挑戦的な笑みを浮かべ返事を返さずじっとしている君島にそっと腕を回した。
「君島…、愛してる。」
「…っ、」
そして、抱きしめた君島に向かって愛を囁くと、ちらりと宗徳を見て君島の頬に手を添えた。
見ていられなくて、宗徳は思わず視線を下に落とす。
「…君島?」
だが、次に聞こえてきたのは喜びの声ではなく、不思議そうに君島の名を呼ぶ安本の声だった。
君島は、自分の頬に置かれた安本の手を取り自分の頬から引きはがしていた。その手をそっと下ろさせると、自分を抱いている手も離させる。そして、くるりと後ろを向いた時にそこにいた宗徳を見てひどく驚いたお顔をした。
驚いたのは宗徳も同じで、急にこちらを向いた君島に声をかける事も出来ずにただ唖然と立ち尽くす。
しばしの沈黙の後、動き出したのは宗徳だった。ぐっと拳を握りしめ、一歩前へと踏み出す。そして、その歪んだ顔に必死に笑顔を乗せて君島に向かって微笑んだ。
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