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「はっ、なんだ、覗き見かよ。趣味が悪いなあ、さすが草いじりが好きな陰気野郎だぜ。」
二人の目の前に立った宗徳に、安本が心底バカにした目を向ける。だが宗徳はそんな安本に一際強い眼差しを向けた。
あの日、安本に別れを告げられ涙も流さず白くなるほどに強く拳を握りしめ立ち尽くす君島を思い出す。あんなに人を一途に思えるのだと、涙を流さず泣いている会長の背中を支えていたくなった。
君島は、恐らく安本を選ぶだろう。
元々、君島が幸せになるまでとの約束だった。どうか、幸せになってほしい。それでも。
「…会長。俺、あなたが好きです。」
自分の想いを、なかったものにだけはしたくないから。ちゃんと、告げてからあなたの元を去ろう。
「ですから…、どうか、幸せになってください。」
そして、どうか思い出してほしい。あなたの幸せを願うものが、ここにいたことを。あなたの花が咲くのを、心待ちにしていた者がいる事を。
「は、はは…、何言ってんだ。振られるのわかってて告るなんざ、かわいそうなやつだな、なあ、君島…」
「離せ」
宗徳の告白に動揺しつつも鼻で笑い、君島の肩を抱き引き寄せようとした安本に君島がその手を払いながら冷たく言い放った。
「き、君島…?」
払われた手を宙に浮かせたまま、安本が唖然とした顔で君島を見る。その表情に、安本は息をのんだ。
君島の顔には、なんの感情も浮かんでいなかった。
安本はひどく動揺した。付き合いを始めてから、君島の目はいつだって自分を見るときに熱がこもっていた。それが、今はどうだろうか。
自分に対して向けるその表情は、明らかにただの知り合いに向けるものでしかなかった。
「蓮田…」
すっと自分の目の前に伸ばされた手を不思議そうに見つめる。一体、どうしたんだろうか。この手は何を意味しているのだろうか。じっと、差し出された君島の手を見つめ、宗徳は、答えを求めようと顔を君島に向けた。
「あ…」
そこには、にこりと、優しく花のような笑みを浮かべる君島がいた。
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