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「美味しかったね」
店を出て再び歩き出す。
大貴が僕にそう言ったけど、僕は今萎えている。
お会計は大貴が全部払ってくれた。自分で払うって何回も言ったのに「新たな門出のお祝い」って言って聞かなかった。
荷物も大貴の手の中だし。
どうしてこうも大貴には流されちゃうんだろう。
はぁ、とため息を一つ零した。
「どうしたの?」
まさか自分のせいで僕がため息ついたなんて思ってないんだろうな。とても心配そうな顔をしている。
「ううん、美味しかったなーって思ってさ」
いかにもバレそうな嘘を吐いたけど、意外にも大貴はあっさりと信じてしまった。
「もう着くよ」
俯いていた顔を上げる大貴の家が見えてきた。
この前もお邪魔して、大貴に料理をご馳走してもらったばっかり。
美味しかったなぁ、大貴のご飯。
「はい、入って」
大貴が家の鍵を開け、僕を招き入れる。
今日から僕は客人ではなく自分の家になるのか。不思議な気分。
「後はもう適当に過ごして?一応、お前の家なんだし」
いきなりパッとはくつろげないけど、今までみたいに靴は揃えて、中に入る。
大貴の家は何度か来ているので構成はある程度把握済み。
「はぁ、疲れたー」
大貴が荷物をソファーの横に置いてソファーに寝転がった。
家の中の大貴って結構グータラしてるんだ。
気を許してくれてるのかなって少し胸が弾む。
「あ、そうだ優。冷蔵庫に入ってる飲み物持ってきてくれない?何でもいいから」
「はーい」
寝転がってる大貴はきっと立ち上がるのが面倒くさくなっちゃったんだろうから、僕が代わりに取りに行く。
冷蔵庫を開けると、ペットボトルのジュースや缶のジュースが結構入っていた。
大貴はどんなのが飲みたいんだろう……
中を見ながら考え、缶のジュースを手に取った。
一応缶からコップに入れ替えて、大貴と自分の分を持ってリビングへ。
シュワシュワとコップの中で炭酸が弾け飛んでいる。
「はい、どうぞ」
大貴に一つ渡して、自分はソファーを背もたれにしてカーペットの上に座る。
喉がカラカラだったので、僕はコップの中のジュースを一気飲みした。
炭酸が喉でパチパチしてちょっと苦しかったけど、段々いい気分になってきた。
「ねえ優、これ、」
「なーにぃ」
大貴に呼ばれて振り向くと、大貴は「しまった」という顔をしていた。
「優、これ全部一気に飲んだの?」
大貴の声がいつもより優しく聞こえる。
というか何か体がホワホワして空が飛べそう。
「ふふーん、美味しかったぁ。大貴は飲まないのー?」
飲まないなら僕が飲んじゃおうと思って一口分しか減っていない大貴のコップに手を伸ばした。が、かわされてしまう。
「なんでぇ」
大貴の手を掴んで揺さぶる。
何でくれないんだろう。もったいないのになぁ。
「ダーメ。これはお酒だよ優。ちゃんと見てから飲まないと」
大貴が立ち上がり、冷蔵庫の中に残りをしまった。
「だーいきっ、僕ね、大貴のこと大好きっ」
立ち上がっている大貴の腰に抱き着いた。そして背中に頬をスリスリ。
「こら、ちょっと離れて」
大貴が僕を引き剥がそうとする。
やだやだ、離れたくなんかないもん。
「やだぁ」
僕は必死に抵抗して大貴から離れようとしなかった。
「優、ちょっと一回離れよう。な?」
大貴に優しく言われて僕はしょうがなく離れてあげた。
まだくっついていたかったのになぁ。
大貴が僕の方に向き直る。
「なーに大貴。あ、もしかしてチューしてくれるの?チュー」
大貴とチュー出来るなんて嬉しい。
僕は唇を前に突き出して大貴がチューしてくれるのを待った。
「チューはしないよ。そういうのは恋人同士がやるものだから」
大貴が僕に言い聞かせるように言ってきた。
僕たちは恋人同士じゃないからチュー出来ないってこと?
「じゃあ恋人、なる。大貴とチューしたいの。大貴は、嫌?」
「嫌なわけねえーだろ、ったく。優、お前後悔しても知らねえからな」
後悔…………?
「しないよ」って言おうとした瞬間、唇に何かが触れた。
柔らかくてあったかくて、優しいもの。
そして離れて行った。
大貴が、チューしてくれた。
僕は嬉しくて「もっと」って意味を込めて、大貴の首に手を回した。
すると大貴はため息をついて、僕の顎を持ち上げ、再び口付けた。
さっきのとは違って強気で強引なキス。
触れ合ってる唇がジンジン熱い。
咥内に大貴の舌がヌルッと入ってきた。
色んなところを舌で舐められ、擽ったいけど気持ち良い。
「んっ、ふ……っ」
僕のだらしない声が部屋に響く。
気持ち良くて腰が抜けそうになってきた。
もうだめ、と思い大貴にしがみつくと、大貴はキスしたまま僕を抱き抱え、ソファーに連れて行く。
仰向けの僕に大貴が被さっているこの状況は、密着していて大貴の匂いがいっぱいする。
気持ち良い気持ち良い気持ち良い。
大貴の舌は僕の口から出て行くことはなく、ずっと僕の咥内を掻き回している。
ちょっと僕の舌を大貴の舌に絡めてみれば、あっという間に持っていかれる。
時間を忘れ、いっぱいキスした所で、名残惜しく大貴の唇が離れて行った。
余りにも激しいキスで、僕の息は上がってしまった。顔も熱い。
「だ、いき……」
大貴も少し乱れていて、それがまたかっこ良くて。
「っ、ごめん」
大貴がハッとしたように僕に謝った。
どうして謝るの?なんで謝るの?
「俺風呂入ってくる」
僕の上から退こうとしていた大貴の手を引っ張った。
「行かないで、大貴……」
大貴の温もりを離したくない。
ギュッと大貴の手を握った。大貴は何も言わない。
「僕、嬉しかったよ、大貴がチューしてくれて」
大貴は黙ったまま僕の話を聞いている。
「ずっと、ずっと好きだったから、ごめんね、大貴」
その言葉を聞いて、大貴の目は見開いた。
「ずっと、俺の事好きだったの?」
少し声が震えてる。
「好きだよ、大貴のこと」
「俺はてっきり、お前が俺の事友達だと思ってると思ったから、俺だって我慢してたんだよ」
握っている大貴の手に力がこもった。
「が、まん?」
大貴は観念したように話し始めた。
「そう、我慢。俺だって前から優の事好きだった。初めは可愛いなって思うくらいだったけど、気付いたら恋になって、でも優、全然そんな素振り見せねえから、俺の片想いだなって思って気持ち抑えてたの」
うそ、大貴も僕の事、好きだったの?
全然知らなかった。大貴こそそんな素振り見せないから。
「だいきっ、」
僕は大貴に抱き着いた。
大貴は一瞬ビックリしていたけど、抱き締め返してくれた。
「好き、大好き」
「俺も好きだよ」
僕たちは叶わないと思っていたこの恋が、今日、実ったのである。
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