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バスで帰ろうかと思ったけど、何故か歩きたい気分になって僕は歩いて帰る事にした。
ちょうど夕暮れ時で、夕日が眩しい。
風も温かくて歩くには最適だった。
公園の横を通ると子供たちが楽しそうにはしゃいでいる。
無邪気っていいなぁ、なんて。
家に着いたのは、歩き始めてから一時間くらい経ったくらいだった。
一時間歩いたのに全然苦痛じゃなくて、どちらかと言うと一瞬と思えた。
鍵は開いてないから、大貴はまだ帰ってきてない。
一緒に暮らし始める時に合鍵を貰ったので、その合鍵で開ける。
「ただいま」
誰もいない家の中に声をかけて中に入る。
部屋は暗くて、今の僕の心の中みたいだ。
電気をつけ、ソファーに寝転ぶ。
大貴が帰ってくるまでに、後二時間くらいある。
僕は夜ご飯はまだ食べてないけどお腹は空いていないので、寝て待つことにした。
「ただいま」
薄れた意識の中で大貴の声が聞こえた。
あれ、帰ってきたのかな……
足音も聞こえるので、きっと帰ってきたんだと思う。
でもまだ寝ていたくて、目がなかなか開かない。
再び意識も遠のいて行く。
「優、寝てるの?」
大貴の声で遠のいて行った意識がまた引き戻されようとしている。
「優、」
大貴が僕の名前を優しく呼びながら頭を撫でた。
僕はそれが心地よくて、もう意識は覚醒されているけどわざと寝たフリを続けた。
「起きてよ、優」
僕に何度もキスを落とす。
今日は何かいつもと違う。バイト先で何かあったのかな?
「優好きだよ。ごめんな、最近構ってやれなくて」
大貴がそう言って僕にもう一度口付ける。
そしてそのまま洗面所に行ってしまった。
何だ何だ、今日の大貴めちゃくちゃ可愛い。
でもだからこそ、夏恋の事を言いづらい。
もしバイト先で何かあって、ただでさえ疲れてるのに更に負担をかけることになるのなら、尚更申し訳ないと思う。
「あれ、優起きたんだ」
「うん。おかえり」
僕は精一杯笑ったつもりだけど、笑えてたかな。
僕は寝転がっていた体を起こし、ソファーに座り直す。
「優、ご飯食べた?」
大貴がキッチンに立ち、何か準備をしている。
きっと大貴は何も食べてないだろうから、作るつもりなんだろう。
「ううん食べてない」
「じゃあ一緒に食べよっか」
大貴が着々と準備を進めている。
このままだとご飯を食べながら話す事になってしまう。
面と向かって話せる内容じゃない。
「大貴、その前に話したい事ある」
僕の真剣な声に、大貴もただならぬ話だと理解したのか、手を休めて戻って来た。
「何?」
不思議そうな顔をしている。
そりゃこれから僕が話す内容が〝浮気した〟っていう内容だなんて思わないだろうな。
「あのね、僕ね、今日…………浮気しちゃった」
「……は?どういう意味」
大貴の声色が変わった。
僕は大貴の顔なんて見れなくて、咄嗟に俯いた。
「今日、夏恋と会ったじゃん?その時夏恋に手繋がれたの。でも振り解けなくて」
声が震える。
「……そっか、大丈夫だよ。手振り解くのって勇気いるもんな」
大貴から返ってきた言葉は意外なものだった。
怒って……ない?
「ごめんなさい」
「良いよ、言ってくれてありがとな」
そう言ってソファーから立ち上がろうとしていた。
「怒らないの?」
「だって仕方ないことじゃん?」
「僕が逆の立場だったら嫌だよ。それとも大貴は、僕が夏恋と手繋いでも仕方ないで終われるの?何とも思わないの?」
僕は一体何を言ってるんだ。
自分でも何が何だか分からない。
「思わない訳ねえだろ」
あ、怒ってる。
でもそれが普通だと思うよ。
「うん、怒って当たり前だよ」
「今日はもう疲れてるから正直今は話したくない」
大貴にそう言われ、グサッと心に刺さったものはあるけれど、僕は「ごめんね」とだけ残して自分の部屋に行った。
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