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元きた道を戻るだけなのに、とても長く感じた。
相変わらず僕の歩幅に合わせてくれてる。大貴のちょっとした優しさが身に染みた。
やっと家に着き、大貴が玄関先で「ちょっと待ってて」と中に入って行った。
すぐにタオルを片手に戻って来た。
「これで拭いて。お湯溜まってるから早く風呂入りな」
「あ、うん。ありがと……」
僕は言われた通りに体を拭き、急いで風呂場へ向かった。
濡れた服を全て洗濯機の中へ入れる。
「寒い……」
飛び込むように浴槽に浸かった。
ちょっと熱いけど、それだけ体が冷えきってる証拠。
「何やってんだろ」
自分が情けなくて悔しかった。
僕は声を押し殺して、泣きじゃくった。
それから風呂を出たのは結構後で、二時間以上も入っていた。
大貴はリビングに居なくて、食卓にはラップに包まれた夕食が置いてあった。
「僕の分も作ってくれてたんだ」
涙腺がまた緩みそうになった。
一つ一つ温めて、味わうように噛み締めた。
大貴の作ったご飯は変わらず大貴の味がして、何故か懐かしく思えた。
一人黙々と食べ終わると、食器を洗う。
前の家に戻った気分だ。
あの頃は、一人で起きて一人でご飯を作って、一人で食べて、一人で洗って、一人でテレビを見て、一人で出かけて、一人で帰って来て、一人で寝る。
言葉なんて一度も発さない日だってあった。
僕にとってそれが当たり前だったのに、今では、常に誰かがいる。
そんな甘えた生活を送っていたから、気の緩みが出来てこんな結果を招いたんだ。
つまりそれは自業自得。
カシャンッ
「あっ、」
僕は考え事をしながら皿洗いをしていたせいで、手を滑らせて一つ割ってしまった。
「ごめんなさい」
そう言いながら僕は素手で皿の破片を一つ一つ片付ける。
大貴が居たら、俺がやるって言い出すんだろうな。
素手で拾ったら絶対怒られちゃう。
ふとした瞬間に大貴の事を考えている僕は、本当にゾッコンなんだと思う。
それでも浮気してしまって、自分を殺したい。
破片を全て拾い終え、手を洗う。
はぁ、と一段落ついてソファーに寝ろこがった。
気付いたら僕は眠ってしまっていた。
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