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待ち合わせ場所に10分前に着いた。
まだ和希の姿は見えなくて、そこに突っ立った。
和希はちょっとおちゃらけた部分もあるけど、すっごくいい人で僕は大好きなんだ。
スマホゲームをやりながら和希を待っている事にした。
スマホゲームの10分なんてもはや一瞬で。
「優!すまん遅れた!」
和希が寝癖を付けて走ってきた。
「おはよ。寝坊したの?」
和希の寝癖を触りながら馬鹿にしてみる。
すると和希は顔を真っ赤にして、
「し、してねえーし!」
と反抗してきた。
そんなバレバレの嘘ついちゃって。
「和希、服はキメてる癖に寝癖付いてたら台無しだよ?僕が直してあげる」
「行こう」と僕は歩き出した。
「ちょ、待てよ!」
和希も慌てて追いかけてくる。
既にこんなに楽しいんだもん、絶対今日は楽しい日になるはずと期待を込めて一歩一歩足を進めた。
僕が向かった先は薬局。
整髪料の置いてある場所へ。
「何買うの?」
和希が不思議そうに僕を見つめている。
僕はそんな和希の言葉を無視してお目当ての物を探す。
「えーっと…………あ、あった」
僕が手に取ったのは寝癖直し。
これを付けて本当はドライヤーで乾かすんだけど、ドライヤーは今手元にないから自然乾燥で。
「これ買って早く寝癖直そう。あとワックスも買わなきゃ」
僕は寝癖直しを手に、次はワックスを探した。
なるべくガチガチに固まるやつがいいな。
僕はあんまりセットとかしないから、ガチガチのワックスなんて自分で買ったことないけど、大貴の家にあるのはガチガチなワックスだから最近は良く使う。
大貴、セットする時結構ガッツリするもんなぁ。
どんな大貴も格好良いから、ある意味何でもいいんだけど。
「これこれ!」
僕が手に取ったのは、大貴がいつも使ってるやつ。
僕は無意識にそれを探していたんだなと思うと、とことん大貴に溺れている。
「なんでこれにしたの?」
「これね、大貴が使ってるやつだから」
「そうか。そりゃ同じのが良いわな」
「うん、でもこれ買うのは和希だよ?僕じゃないもん」
そう言うと和希は目を点にした。
「お、俺が買うのか?」
「当たり前じゃん」
和希がなんかブツブツ言ってるけど、気にしないでおこう。
寝癖直しとワックスを大貴に渡してレジで購入し、薬局を出た。
「和希こっち来て」
和希の袋から寝癖直しを取り出し、寝癖の部分にスプレーした。
みるみる寝癖は落ち着いていき、ベタベタ濡れた状態になった。
「しばらくはこのままで。乾いたらワックス付けてイケイケにしようね」
「寝癖付いてる髪も嫌だけどさ、濡れてる髪もなかなか嫌だな」
気になるようで、何回も髪を触っている。
うーん、濡れてても別にそこまで変じゃないと思うけど。
最近は、濡れ髪ってやつが流行ってるらしいし。
「で、もうすぐでお昼になるけどご飯どこで食べるの?」
「良くぞ聞いてくれました!実は俺、もう予約してあるんだ。そろそろ行くか!」
楽しそうに自慢してくる和希を見てると、こっちまですごく楽しくなってくる。
「そうだね、行こっか」
歩き出した和希を早足で追いかけた。
そして着いたのは駅。
「電車で行くの?」
そんな遠くまで行くのだろうか。
僕はてっきりこの辺で食べるのかと思ってた。
「そうです。電車で行きます」
何を企んでいるのだろうか、和希はドヤ顔をしてきた。
ここはもう和希に任せよう。
「楽しみです、和希さん」
そう伝えると嬉しそうに、でもちょっと照れ臭そうに笑った。
僕が女の子だったら絶対好きになるなぁ、和希の事。
だって、明るくて、人の事良く考えてて、前向きで、笑顔が素敵で。見た目も全然格好良いと思うし。そんでも彼女がいないんだから不思議なもんだ。
「お、きたきた。この電車に乗るんだよ」
電車がちょうど良く来た。
中はさほど混んではいない。パラパラと人がいる感じ。
首都に向かう電車は反対側なので、そりゃ人も少ないわけか。
「下、気を付けてな」
乗る時に僕の心配をしてくれたんだけど、僕別に電車乗った事あるからね。舐めてるだろこいつ。
そんな思いは抑えて「ありがと」と伝えた。
空いている席に座る。
「遠いの?」
「いや、遠くはない」
どこで降りるの?と聞いても多分答えてくれないから黙って電車に揺られた。
お腹空いてるのに電車乗ったからか、ちょっと気持ち悪くなってきた。
僕は背もたれに体を預け目を閉じる。
「優?どうした?発作か?」
和希が僕の様子を見て、心配した顔で聞いてくる。
「ううん、ちょっと酔っちゃっただけ」
「ごめんな、電車なんて乗らせて」
あからさまにシュンとしている和希が可愛らしく思えた。
「大丈夫だって、気にしないで」
少しでも元気を出して欲しくて僕は笑って見せた。
和希の顔に少しだけ笑顔が戻った。
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