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「優、起きて」
大貴の声と、揺すぶられる感覚で目が覚めた。
「大貴、お帰り」
大貴は何事もなかったかのように「ただいま」と答えた。
「そんな所で寝てたら風邪引くよ」
風邪なんてどうだっていい。
風邪を引いたら大貴が僕だけを見て、看病してくれるんだったら風邪になりたいよ。
僕は気分を紛らわすために、違う話題を出した。
「今日ね、和希がサプライズしてくれたの」
「サプライズ?」
やっぱり忘れてたんだ、僕が誕生日ってこと。
「………そう、僕が誕生日だからって美味しいご飯ご馳走してくれた」
「そういえば優、今日誕生日だったな」
「うん」
「誕生日おめでとう、優」
大貴から初めて「おめでとう」という言葉が聞けた。
誰に言われるよりも一番嬉しくて、たまらない気持ちになった。
「大貴、ありがとう、僕、嬉しい」
感極まって涙がポロッと零れた。
大貴はそんな僕を見て笑いながら優しく抱き締めてくれた。
いつもの大貴の匂い、のはずがその中に女の人の香水のような匂いが混ざっていた。
僕はあの時の大貴が女の人と歩いていたシーンを思い出して、咄嗟に大貴を突き飛ばしてしまった。
「優?」
不思議そうに僕を大貴は眺めている。
僕は思わず俯いた。
「……ごめんね」
「どうした、何かあった?」
「…………」
聞きたいことはたくさんあるのに、言葉が出てこない。
「優、」
僕の名前を呼びながら大貴はもう一度僕に近付いた。
「こ、来ないでっ」
自分でも驚くほど大きな声を出していた。
「ご、めん……」
「あのさ、何か言いたい事あるなら言えよ」
大貴の声が苛つきを含んでいる。少し怖い。
「だ、って……今日、大貴、女の人と……歩いてた、から……」
大貴は考える素振りをして、ひらめいたような表情を見せた。
「あぁ、見たんだ」
大貴の声が少し低くなった。
ほらやっぱり、見ちゃいけなかったんだ。
「……もういい」
少し一人になって頭を冷やしたい。
僕は立ち上がり、自室に戻ろうとした。
「待てって」
大貴は僕を止めようと手を伸ばしたが、掴むことはしなかった。
さっき僕が拒んだからだ。
少し寂しいと思ってしまった自分が嫌になった。
「ごめんね、見て見ぬフリしようと思ったよ、でも出来なかったの。僕は大貴が楽しそうに女の人と歩いてるのが嫌だった。ほら、やっぱり好きなのは僕だけだったんだね」
こんなこと言いたいわけじゃないのに、今まで押さえつけてきた気持ちがここぞとばかりに溢れてくる。
止めなきゃ、止めたい、止まらない。
「もう大貴なんて知らない」
あぁ、言ってしまった。
これを言ったら終わりだと分かっていたのに、自ら沼に落ちた。
僕はもう何が何だか分からなくなって、早足で自室に入った。
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