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3 彼は
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H side
やがて人身売買が始まった。
ここは、首輪をつけられた奴隷たちが主人につれられて客席を一週周り、その後オークション形式で売買する、というしくみだそうだ。
おれたちは、その様子を眺めていた。
上手く出来なくて殴られ、怒鳴られる奴隷もいれば、客の靴裏を舐めて奉仕したり、背中を灰皿として使わせる奴隷もいた。背中で煙草消されるとか死ぬほど熱いんだろーなー、とかどうでもいいことを考えてた。
しばらくして、何人目かの奴隷が来た。
その奴隷を見たフジは、驚いたように目を見開いた。
「ふ、じぃ...?」
その奴隷は弱々しい声で尋ねてきた。細い体には傷や痣がこれでもかというほどある。顔は整っているが、目の下に隈ができている。濃い茶の髪には、赤いメッシュがかかっていた。
「キヨ...なの?」
フジは今にも泣き出しそうな顔で青ざめている。
そんなフジをよそに、主人はキヨの髪を鷲掴みにして怒鳴る。
「おい!奴隷は喋らなくていいって言っただろう!商品は黙ってろ!」
彼の細い体を蹴り飛ばし、頭を踏みつける。傷痕からは血が滲んでいる。
「い、だぁっ...!ぅうっ、ごめんなさぃっ...ゆるして、くださいぃ...!」
「っ、まあまあ、程々にしてやって下さい」
さっきまで泣き出しそうだったのに、冷静に止めに入る。だが、その声には怒りが現れていた。拳が震えている。普段はしないのに、舌打ちしてる。
その時、おれは、無意識に動いていた。
生クリームの乗ったパンケーキを一口大に切り分け、彼に差し出していた。彼は目を丸くしている。おれは、優しく話しかけた。
「ほら、食べな?お腹空いてるでしょ...?」
「こ、くおう...?」
フジと彼の主人は驚いたようにおれを見る。
「あの、奴隷たちの管理は私どもがしっかりと行っていますので、お客様がそういった配慮をされる必要は...」
「うるさいなぁ。おれ国王なんだけど。βのあんたがおれに口答えしていいと思ってんの?」
国王という地位で脅すのはあんま好きじゃ無いけれど、こう言うときに役に立つ。国王でよかった。
「ほんとに、いいの...?」
「いいよ。ほら、あーんして」
そう言ってパンケーキを差し出すと、彼はぽろぽろと涙をながす。そして、一口一口、味わうようにパンケーキをかじった。
「ぅっ、ぐすっ、ごちそぉ、さまでしたぁっ...!」
「いいよいいよ。それよりさ...」
涙でぐしょぐしょになってる彼にこっそりと囁く。伝え終わると、彼はうんうんと頷いた。
「じゃ、あとでお願いします」
礼をして、主人は彼を連れて次の席へ向かった。
「ねえ、ヒラ...?」
一息ついたところでフジに聞かれる。
「さっきなんて囁いたの?」
「んー、知りたい?」
「うん...めっちゃ気になる」
おれは最後の一口のパンケーキを食べながら言う。
「あとで迎え行くよ、ってね」
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