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翡翠と白鷺-7
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「俺が悪かった。お前はひとつも悪くない」
眼に涙を浮かべて何度も謝る葵琉に深く頭を下げると、紅く充血した眼の縁から涙が零れた。
「シロ……」
「俺が、あんな落書きしたから……。ごめんな、痛い思いさせて、本当にごめんな」
「シロは悪くない」
どうしてそこまで俺を庇うんだ。
「シロ……俺、明日も指導してやるから来いって言われた。明日は柔道だって」
「柔道……」
生指の『指導』には何パターンかあって、1年生で初回だとバレーボールなのだが2回目からは柔道や滝行などが選択される。
生指預かりに処された生徒が口を揃えて一番キツいと言うのが、柔道の10分間ノンストップで投げられ続ける指導。
「今日あんなに痛くて……明日、どれだけ痛いか……怖いよ、シロ
今まであれだけ生意気だった葵琉が震えながら小さい身体を更に縮こまらせているのを見ると、軽率な自分の行動を悔やんでも悔やみきれない。
「大丈夫だよ。明日は行かなくていいから」
とにかく安心させようと頭を撫でてやると葵琉は困ったような顔をした。
「駄目、行かなきゃ」
「何で?」
「絶対に来いって。来ないと留年させるって」
恐い、恐いとうわごとのように繰り返す葵琉を見ているのが辛くて、小さい身体を自分の胸へと引き寄せた。
道場の子供が練習が辛くて泣いていても、こうしてやるとすぐに落ち着く。
「シロ!?」
朱に染まった目をびっくりしたように見開いた葵琉の頭をわしゃわしゃと撫でてから目を真っ直ぐ見て「大丈夫だ」と言い聞かせる。
「大丈夫だ。生指になんて行かせない。俺がちゃんと話をするから」
「でも、そんな事したらシロが……」
何で今日に限ってそんなに良い子なんだ。
いつもみたいに生意気な口を叩いていてくれたら心をいっぱいに占領するこの罪悪感も少しは治まるだろうに。
「心配するな。元々悪いのは俺でお前には全く非はないんだから」
「シロ……」
「安心しろ。な?」
落ち着かせようと頭を撫でてやる。
「このまま帰ったら家の人心配するだろう。今夜はうち来るか?」
「いいの?」
「今日だけな」
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