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翡翠と白鷺-11
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「あの時のシロ、白鷺みたいで凄く綺麗だった」
葵琉は道場の光景を思い起こしているのか、天井を見つめて呟いた。
「白鷺かぁ。俺が白鷺だったらお前は翡翠ってとこかな」
昔、道場のサマーキャンプで訪れた川で見た美しい鳥の記憶は未だに鮮明だ。
「カワセミ?」
「宝石のような青い羽を持ったとても綺麗な鳥なんだよ」
見たことがないと言うから、スマホで画像を検索して見せてやった。
「ちっちゃい鳥」
「だからお前みたいだろ」
葵琉を見ていて自然と湧いてくる笑顔は、いつも風紀室で生徒と対峙している時とは違って本当に心から笑えてるんだなと実感する。
「ちっちゃいの……気にしてるのに」
不服そうに唇を突き出してこっちを見上げてくる葵琉の瞳が、スマホの画像の翡翠とシンクロして見えて、もっと近付いてよく見てみたくなった。
「シロ!?」
心を表すように澄んだ黒い瞳はびっくりしたように見開かれて、俺の顔を大きく映し出している。
不満げに突き出されていた唇は一瞬だけ真一文字に結ばれてから元のように突き出された。
形は同じでもそこにはさっきと全然違う意志があった。
今日の俺はおかしい。どうかしている。
もしかしたら夢でも見ているのかもしれない。
これは夢だ。
きっと夢だ。
ならば最後までその夢を見届けてやるのも悪くはない――。
眼を閉じた葵琉との距離が一瞬だけゼロになった。
「お、俺もう寝ないと」
「そうだな、おやすみ」
上を向いて布団を被っても跳ねるような心臓の鼓動は隠せそうになかった。
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