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赤紙ふたたび-1
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「どうする?」
「何を?」
バレーボールの痣も綺麗に消え去ったある日、俺はすっかり風紀室の主となってしまった生意気な後輩に黙ってプリントを突き出した。
「何これ?」
「これから葵琉の再指導は生指でやりますよってこと」
漫画を読みながらのんびり紅茶を飲んでいた葵琉の顔色が変わった。
「あ……のさ、最終通告ってやつ?」
「そ」
最終通告……通称「赤紙」。生指部長である柔道教師の気紛れで年に数回発令される。
この赤紙を貰った生徒は即座に生指部長の元へ出頭しなければならない。
基本的に風紀検査の再指導は風紀長である俺に任される。
でも、たまにこうして生指が介入してくる。
うちの学校のやな所は、成績の良い生徒は再指導に落ち続けてても見てみぬふり。
俺の幼馴染みの月灯がいい例だ。
伸ばしっぱなしの前髪で毎月引っ掛かってくるけど、あいつは学年首席だからノーマーク。
一方、葵琉は成績は中の下。可哀相だが明日には生指に引き渡すしかない。
「失礼します」
風紀副長の鞘が書類を手に入ってきた。
「あ、お取り込み中でしたか?」
微妙な空気を察して引き返そうとする鞘の腕を掴んで引き止める。
「いいよ、もう話終わったから」
わざと冷たく突き放してみせると、葵琉は首をフルフルと振って拒絶する。
「沢井先輩タスケテ」
いつもは呼び捨てのくせにこんな時だけ調子のいいやつだ。
「何かあったんですか?」
葵琉と鞘は同じ1年生でもクラスが違うから知らないんだろう。
「ああ、これ」
「あ……赤紙」
諸悪の権現であるプリントを指差すと、鞘はすぐに納得のいった表情になって葵琉を同情の眼差しで見つめた。
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