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赤紙ふたたび-2
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「志朗いるか?」
ノックを1回だけして入ってきた顔を見て葵琉はソファーから飛び上がって俺の脇に隠れた。
月灯見てビビってるようじゃ、明日からの生指預かりが思いやられる。
背後の葵琉に気取られないようにそっとため息をついた。
「お茶お煎れします。茶葉は何がよろしいですか?」
「アールグレイ。ストレートでいい」
「はい」
最近、鞘は月灯のお茶も淹れるようになった。
月灯とも平気で喋る鞘を葵琉は羨望の眼差しで見ている。
葵琉も一度喋ってみればいいのにと思うが、本人はなかなかその気になってくれない。
「パウンドケーキがあるからそれも出したげて」
「はい」
温めたカップとソーサーは鞘がその日の気分でチョイスしている。
今日は白地にレリーフの施されたもの。
色彩がシンプルな分、紅茶の水色が美しく引き立つ。
「美味しそう。これ、シロが作ったの?」
「いや、月灯が作った」
「え?」
思わず月灯をジッと見て、その眼光の鋭さに慌てて目を逸らしている。
やめたげて。
月灯こう見えても傷付きやすいんだから。
「月灯は料理が上手なんだよ。鞘のトコ行って分けて貰っといで」
「うん」
葵琉はミニキッチンの鞘の所に行ってケーキを摘んでいる。
鞘も、そう大きいほうではないがこうして2人並ぶと葵琉の小ささが際立って見える。
「あいつの茶も美味くなったな」
「そりゃあこの俺が教育したから」
「で、あの1年生は何であんなにしょぼくれてるんだ?」
傍若無人そうに見えて、月灯は意外と人のことをよく観察している。
周りからどう見られているかを常に気にする繊細なやつだ。
「葵琉? 赤紙もらっちゃってねー。明日から生指行き」
「そうか。可哀相にな、火あぶり(護摩行)と水責め(滝行)だろ?」
「うん。葵琉に耐えられるかなー? 俺でも未知の世界だもんね」
その時、ミニキッチンで何かが倒れる音がした。
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