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赤紙ふたたび-3
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「志朗さん……この子」
ミニキッチンに行ってみると葵琉が気絶していた。
「しょうがない子」
軽い身体をソファーまで抱えて来て、膝の上に寝かす。
ただでさえ弱々しい身体は気を失っているせいで余計にぐにゃりとしている。
「何がいけないんだ?」
「これ」
葵琉の細い髪を手で掬い上げる。
「別に長くはないだろ」
「違う、色」
「地毛じゃないのか」
「そ」
根元まで綺麗に染まってるからちょっと見ただけでは染めていることがわからない。
「仏教のクラスにもっと明るい色のやついるだろ?」
「銀? あの子勉強できるもん」
寺の跡取りで仏教コースの銀は茶髪どころか金髪にしているが、学年2位の成績をキープしているので教師も何も言わない。
「こいつは?」
「中の下ってとこ」
「そうか、仕方ねえな」
可哀想だけど本人が黒に戻すのは嫌だと言うからこればかりはどうしようもない。
俺が「合格」の判を押してあげれば護摩行と滝行からは逃れられるが、贔屓されているとの噂が立つと後々よろしくない。
「志朗さんが勉強教えてあげたらどうですか?」
今まで黙って紅茶を飲んでいた鞘が口を挟んだ。
「俺より月灯が適任だよ。月灯こう見えても頭いいから」
「こう見えてもは余計だ」
鞘は不思議と月灯を恐がらない。
俺を介してしか話さないが、葵琉たちみたいに露骨に逃げたりしない。
月灯は学校で親しく話す友人が俺ぐらいだから、鞘と月灯が友達になるのを期待しているが先は長そうだ。
2人が帰って暫くして葵琉が目を覚ました。
「あれ? 何で?」
辺りを見渡した葵琉の目がテーブルの赤紙に止まって一気に表情が暗くなった。
「そうだった……助けてシロ」
「諦めなー」
「ヤダ……恐い」
葵琉は腰に巻き付いて離れようとしない。
「これ貸してあげるからとりあえず明日の朝掛けてきな」
引き出しにあった黒スプレーを差し出すが葵琉は受け取ろうとしない。
「やだ」
「は?」
「スプレーは墨みたいな色になるから嫌」
「あそ。じゃあ帰るから」
黒スプレーを引き出しに戻して立ち上がる。
「違う。待って」
「何?」
「色戻すから一緒に来て」
ったく、月灯といい銀といい葵琉といい俺の周りは何でこんな世話のやけるやつばかりなんだ。
手のかからないのは鞘だけだ。
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