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赤紙ふたたび-4
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「だからさ、最初の店にしとけばよかったんだって」
葵琉に付き合ってカラーのできる店を探しているがもう7時だ。
この時間カラーの受付はどこも終了している。
最初に通りかかった店は雰囲気がヤダ、2軒目は前に行って気にいらなかった……徒歩で回っているから時間がかかるんだ。
「もう諦めよ、な? 初めてだし、葵琉は小っちゃいしひどくはされないって」
いつもは小さいって言うと怒るのに、今日はさすがになにも言わない。
「いやだ」
ベビーフェイスに似合わず強情なヤツだ。
「俺が一緒に謝りに行ってあげるから」
「始めっから来て貰うつもりだし」
あっそ。
とにかく、今日中に染め直させなければならない。
こうなったら最後の手段は……。
俺はある人の顔を思い浮かべてカバンからスマホを取り出した。
「お疲れさまです、志朗です。悠夜兄さんに折り入ってお願いが……あ、はい。大丈夫です。すみません」
「誰?」
すぐに電話を切った俺に葵琉は怪訝そうな視線を寄越した。
「俺の兄弟子だよ。美容師やってるから頼んでやろうかと思ってな」
悠夜兄さんはゆくゆくは沢井流を継いでくれる予定だが、若いうちは好きな事をやりたいと言って美容師をしている。
働いているのは沢井流の息の掛かった店だから沢井の枷からは逃れられないけど、それなりに楽しくやっているようだ。
「やってくれるって?」
「駄目だった。怒られた」
怒りに燃えた悠夜兄さんの声を思い返すとげんなりする。
あの声は後日しっかり叱り直されるパターンだ。
「何で?」
「確変中に電話取ると流れが変わるから掛けてくるなって」
悠夜兄さんの休日は、どこぞの寺の後継ぎと同じくギャンブルに明け暮れている。
本業の休みに沢井流の先生業をして更にギャンブルに勤しむというパワフルさには頭が下がる。
俺なんか休みの日はのんびり紅茶を飲んでひたすら身体を休めたいというのに。
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