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赤紙ふたたび-9
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「うっ」
部屋を出るなり葵琉の頭が胸にドンとぶち当たって一瞬呼吸が止まった。
「恐かった」
「俺もだよ、あのおっさん苦手だし」
「ありがと、シロ」
見上げてくる瞳がちょっと潤んでいるのを見て、わしゃわしゃと髪をかき混ぜた。
「これから勉強頑張ろうな」
「シロが教えてくれるの?」
「いんや、月灯が」
月灯の名前を出した途端、葵琉の表情が一気に暗くなった。
何で月灯をそんなに嫌うんだよ、失礼だろう。
「えー、恐い。ヤダ」
「ダメ、月灯もう待ってるから」
風紀室のドアを開けると月灯がソファーで紅茶を飲んでいた。
「用事って何だ」
「月灯~葵琉の勉強見てやってよ」
「はぁ? 何で俺が?」
渋りながらも月灯はいいやつだから何だかんだ断らない。
問題は葵琉で……。
「もしもーし? 生きてますか?」
月灯を目の前にして完全に硬直してしまっている。
「おい、お前」
「はぃぃぃっ」
「……なぁ志朗、俺が何をした?」
硬直している葵琉を見た月灯の表情が切ない。
「いや多分何も」
「だよな……おい、お前」
「はは、はいっ」
「……普通に返事できないのか」
「すす、すみませんっ」
あーあ、葵琉涙目だよ。
これ以上苛めたら月灯も泣いちゃうよ。
「もういい。どこがわからないんだ」
「あの……えっと」
慌てて教科書をめくるが、手が震えて目的のページを探せていない。
何でそこまで恐がるかなー。
生指部長の部屋に行った時も可哀相なぐらい怯えてたがそれ以上だ。
俺には月灯の何がそんなに恐いのかわからない。
「俺のがよっぽど恐いのにねー」
「だな」
「……シロは……恐くない」
「んぁ?」
月灯のひと睨みを受けて葵琉のお尻がソファーからピョコンと浮いた。
月灯は「ちょっと睨んだ」つもりでも、葵琉にとってはちょっとじゃないからな~。
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