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赤紙ふたたび-10
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「失礼します」
お、いいところに鞘が来てくれた。
「鞘~、今度のテストどこ?」
「えっと、ちょっと待って下さいね」
さすが期待の風紀副長、すぐに鞄から手帳が出てくる。
「これです」
開かれたページにはテスト範囲が几帳面な字でびっしりと書きとめてあった。
「苦手な科目は?」
「古文と英語」
「じゃあその2つみてもらう?」
「うん」
俺の方を向いて答えるから身体ごとグイッと月灯の方を向けてやった。
「古文は範囲どこだ?」
「え……えっと」
「源氏物語です」
素早く手帳に目を落とした鞘が助け船を出してくれた。
「英語はどこだ」
「to不定詞です」
まごついている葵琉に代わってまたもや答えるのは鞘だったので月灯は呆れ果てて俺の方を見た。
「俺はどっちに勉強を教えるんだ」
「鞘は教わる必要ないよねー?」
「そんなことないです。そこまで成績良くないので。だから校則守ってるでしょ?」
へー。
風紀の仕事をきっちりこなしてくれる子だから、てっきり勉強も得意かと思っていたので意外だった。
「成績上がったらピアスは開けてみたいです。でも、風紀に入っちゃったから無理ですよね」
「別に鞘なら合格の判押したげるよ」
「こいつの前に俺だろ」
「月灯は自力で回避できるでしょ」
学年首席をキープしているからあの生指部長さえ何も言わないんだから。
「シロ、俺も」
「ああ?」
身を乗り出した葵琉は月灯に睨まれてすぐ小さくなってしまった。
やれやれ。
シロ、シロと慕ってくれるのは可愛らしいが俺にも仕事がある。
だから月灯に相手をして貰えればいいと思ったのだ。
勉強会を企画すれば葵琉と月灯の距離が少しは縮まるかと思ったけど、この分では先は長そうだ。
「はぁ」
「どうしたの、シロ?」
「何でも」
俺の予感は見事に的中して、学年が上がるまで月灯に対する葵琉の態度が軟化することはなかった。
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