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恋路の扉-6
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鞘が風紀長に就任して何かと多忙になったので、お茶を淹れる役割は虎太郎に引き継がれた。
今日も風紀の仕事を終えた虎太郎が生徒会室でお茶を淹れてくれていた。
他の学校はどうか知らないが、うちの学校では生徒会役員とは会議の時ぐらいしか顔を合わせない。
その会議も基本は会議室で行う事にしている。
特に今年は細々とした仕事も俺が一人で済ますので、生徒会室=会長室として俺の憩いの場となっていた。
虎太郎と同じく生徒会室に入り浸っているのが葵琉と月灯だ。
虎太郎が間に入ってうまく会話を振る事で、少しだけ二人の間にある壁は薄くなったように見えた。
「葵琉先輩はお茶何がいいですか?」
「うーん、何か花びらの入ったやつ。ほら先週淹れてくれた」
「わかりました!」
虎太郎は「花びら……花びら……」と呟きながら、茶葉の入った缶を片っ端から手に取っている。
「これと、これと……あと、これです」
大きなトレーに5個も6個も茶缶を載せて葵琉のところに運んでいった。
「えー? わざわざ持ってきたの!?」
葵琉は「じゃあこれ」と金色の四角い缶を指差した。
「わかりました! 瀧川先輩は何がよろしいですか?」
「同じやつでいい」
また仰々しくお店を開かれると思ったのか月灯は即答した。
この実直さが虎太郎の持ち味で、沢井流でも抜群の安定感を醸し出している。
よく働くなぁ。
虎太郎の動きを感心しながら見つめていると葵琉と目があった。
視線があったのは一瞬だけだったが、お尻のあたりがムズッとした。
告白……か。
悠夜兄さんに言われた台詞が頭の片隅から離れようとしない。
ただの先輩後輩とも違うし、友達というのもしっくり来ない。
名前の付けようがない不思議な関係のまま1年が過ぎようとしていた。
このまま関係を確定させないと悠夜兄さんに取られる。
その不安がグイグイ押し寄せてくるけど、はいそうですかというわけにはいかない。
動くものを目で追ってしまうのは動物の習性なのか、気付けばまた虎太郎の事を凝視していた。
葵琉の視線が詰るようなものに見えたのは、俺に後ろめたいところがあるからかもしれない。
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