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恋路の扉-9
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「虎太郎とケンカでもしたのか?」
「シロのバカ」
3度目のバカは呆れたようなバカだった。
何だよ。
今日はそれしか言わないつもりか。
『虎太郎』『悔しい』『シロのバカ』
このキーワードから導き出すべき答えは頭を捻ってみても皆目見当もつかない。
メールの通知音が鳴ってスマホを取り出そうとカバンを開けたとき、薄い水色の包装紙に包まれた箱が目に入った。
いけない!
忘れるところだった。
「あのさ、これ」
「何?」
箱を膝の上にポンと置くと、葵琉は驚いた顔でこっちを見上げた。
「今日誕生日でしょ?」
「何で……シロが知ってるの?」
「悠夜兄さんから聞いたんだよ」
昨日、悠夜兄さんから「あいつ明日誕生日だから何か買ってやれ」と電話が来た。
初めは何で悠夜兄さんが葵琉の誕生日を知っているのかと訝しく思って理由を尋ねたら「お前のために訊いたに決まってるだろ」と返ってきた。
兄弟子なりに弟弟子の恋路を応援しようとしてくれているんだと知って胸が熱くなった。
誕生日なのに泣かしてしまって、本当に「シロのバカ」だな。
「でも……何で悠夜おじちゃんが、シロにそんな事言ったの?」
「……」
「それに俺とシロが……友達って何でおじちゃんが知ってるの?」
「沢井流では兄弟子には隠し事は禁物なんだよ」
これは沢井流というより悠夜兄さんが作った独自のルールだけど、俺や虎太郎のプライベートは悠夜兄さんの前では基本丸裸だ。
虎太郎にもどうやら好きな人が居て、それは何が何でも悠夜兄さんには知られたくないみたいだけど。
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