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恋路の扉-10
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「開けてみてもいい?」
「うん、気に入るかわからないけど」
金色のレースのリボンを解くとリボンと揃いの金色をした星形のシールも破れないようにゆっくり剥がして包装紙を丁寧に開いていった。
暴れて飛び出そうとする心臓もだけど、掌をじっとり湿らせる手汗に自分がどれだけ緊張しているのか思い知らされる。
「マグカップだ~」
翡翠の羽を彷彿とさせるブルーのマグカップは葵琉のイメージにピッタリで、目に入った瞬間これをレジに持っていった。
「ありがと、シロ!」
俺の見たかったキラキラ輝く瞳がようやく戻ってきて、これを選んで正解だったなと安堵する。
「どういたしまして」
奇しくも青と白、二羽の鳥が枝に並んで止まる姿がカップの底にプリントされているのが目に入った。
買う時には底まで見ていなかったから、そんな所に鳥が居るなんて気付いていなかった。
「シロと……俺みたい」
ほら、と二羽の鳥を指差して葵琉はふわっと微笑んだ。
明日も……何か買って来ようか。
この笑顔が見られるのなら葵琉の欲しがるものを何でも買ってやりたい。
「俺、ぜったい大事にする!」
「今日はそろそろ帰る時間だから、明日これでお茶飲もうな」
「うん!!」
さっきまで泣いていたとは思えない変わり身の早さで元気を取り戻した葵琉を促し、生徒会室の戸締まりをした。
「今日、トンカツだからうち来ない?」
「……う~ん」
いつもはトンカツに二つ返事で食い付く葵琉の反応が悪い。
「トンカツ飽きたか?」
「違う。今日は誕生日でケーキ用意してくれてるから」
「そっか。じゃあ家で食べなきゃだな」
ケーキ持ってシロん家行こうかな~なんて言い出すから、さすがにそれはないだろと却下した。
折角お家の人が用意してくれてるんだ、俺の家ならいつでも来れるから。
「また今度な」
「うん……」
残念そうに唇を尖らせて前を向いた葵琉は暫く小石を蹴っていたが急に「あ! いい事考えた!」と振り向いた。
「シロが家来て」
「え?」
「いつもシロん家ばっかりだからたまにはシロが泊まりに来て」
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