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恋路の扉-12
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普通に押そうとしただけでも悲鳴をあげるから仕方なく超初心者コースに変更する。
「息止めるなよ~」
腰に手を回したままほんの少しだけ前に倒していくと、シャンプーの甘い香りが、とろんとした空気を誘う。
「俺もな~こうやって兄弟子から柔軟の相手して貰ったんだよ」
超初心者コースはとにかくゆっくりまったりだから、考え事をする余地も売るほどある。
硬い身体を目の前にすると昔の思い出が懐かしく甦った。
「悠夜おじちゃんに?」
「そうだね~あとは実の兄たちとか」
今はそれぞれ寺の仕事と三味線教室に勤しんでいる兄たちも昔は一緒に沢井流で稽古をしていた。
「シロとお兄ちゃん似てる?」
「う~ん、上の兄貴は爺さんに似てて下の兄貴はお袋に似てるからな~」
「シロは?」
「俺は親父に似てる」
前後左右に身体を軽く揺すってやりながら前に倒すと、さっきよりも少しだけ成長が見られた。
「シロのお父さん見たことない」
「出張が多いからね。今度会わせてあげるよ」
俺の父は婿養子で、結婚前に勤めていた企業にそのまま籍を置いている。
沢井流関連の事柄には全くノータッチなのでとにかく影が薄い。
ふと、夕食時に葵琉のお母さんが話していた言葉を思い出した。
「葵琉は一人っ子だから我が儘でしょう?」
一人っ子……という事はいつかお嫁さんを貰ってお店を継ぐ日が来るんだ。
ご両親ともまだまだ現役だから今すぐにというわけではないけど、いつかはそんな日がやってくる。
そう思うと、葵琉と一緒に過ごせる貴重な時間が急に愛しくなった。
うちに来ればいいのに。
沢井家はあちこちに土地だけはいっぱいあるから小さな紅茶専門店をやるのが俺の夢だ。
葵琉が一緒にやってくれたらいいのに。
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