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恋路の扉-13
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「シロ!?」
まだまだ遠いようですぐそこに迫っている進路の選択を考えると、急に沢山の感情が渦巻いて、気づけば目の前の背中にぎゅっと抱き付いていた。
今言わなければ。
早く言わなければ。
一緒に居られる時間は無限ではないのだから。
「俺と……」
こんな時何て言うんだっけな。
うまい言葉が出てこなくて必死で絞り出そうとしていると、葵琉が足を閉じてこっちを振り向いた。
「シロ……」
「どうした? 足痛いか?」
「ここが痛い」
葵琉が左手で押さえたのはストレッチをしていた脚ではなく胸の辺りだった。
「心臓、悪いのか?」
「違う」
また「シロのバカ」が出るかと身構えたけど、葵琉は唇をきゅっと結んで胸に当てた左手に右手も重ねた。
今にも泣き出しそうな苦し気な顔で胸を押さえているのが不憫で、手を伸ばさずずにはいられなかった。
「シロ!?」
そっと胸の中に抱き込んで背中を擦る。
「こうしてたらちょっとは楽になるかな」
「まだ苦しい」
「大丈夫だ、きっと治るから」
「シロと居るのが苦しい……シロと居ると心臓がギュってなる」
それは――。
俺と一緒だ。
俺は悠夜兄さんからとっくに答えを与えられていたんだ。
「俺もお前と居るのが苦しい……」
葵琉の顔が辛そうに歪む。
「でも」
肩に手を添えると、顔を傾けて小さな紅い唇にキスをした。
「こうすると苦しいのが治るんだよ」
曇りのない夜空のような瞳を見開いた葵琉の顔を真っ直ぐ見据える。
「お前は? 葵琉はまだ苦しい?」
「苦しく……ない。でもドキドキする」
「俺もだよ」
触れるだけのキスを重ねると、胸の鼓動はぐんぐん加速していく。
「好きだよ、葵琉」
「俺も。俺もシロが好き」
あれだけ苦しんだ胸の痛みはもう一欠片も残っていなかった。
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