アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
俺のストレス解消法-5
-
ちゃんと切ってきたんだな。
鬱陶しかった前髪だけでなく全体が短くなっていて、それが葵琉の顔立ちによく似合っていて頬が緩みそうになった。
一層幼く見えるようになったのが、これまた愛らしい。
葵琉のチャームポイントでもある真っ黒な瞳もはっきり見てとることが出来て、目を離したくなくなる。
だけど、他の生徒の目がある手前そんな甘い態度を見せるわけにはいかない。
葵琉のすぐ後ろにも2年生が並んでいる。
あえて厳めしい表情を無理くり拵えて「次!」といつもより大分低い声を出した。
「沢井先輩」
「なに」
「再指導に来ました」
「遅い。次回はもっと早く直して来るように」
緊張しているような、不安げな表情が胸をソワソワさせる。
可愛いな……。
ケンカはまだ続いているんだろうけど、そんなのもうどうだっていい。
このまま人目も憚らず抱き締めて唇を合わせられたらこの心はどんなに満たされるだろうか。
そんな俺の思いを知ってか知らずか葵琉は写経用紙を1枚取って行ってしまった。
「……次!!」
作ったわけではないのに地獄の底から響いてくるような声が出て、葵琉の後ろに並んでいた2年生は卒倒しそうな顔で進み出た。
再指導を担当するのは久々だったが葵琉が写経を丁寧に書く習慣は健在で、次々と他の生徒が退出していき二人だけが風紀室に残された。
「さっぱりしたな」
「……うん」
写経をしながら小さい声で答えた葵琉は俺と目を合わせようともしない。
嫌われた?
考えたくもない最悪な可能性を端的に表したフレーズがテロップになって頭の中を周回する。
撫でていいかな……。
でも、万が一拒絶されたら……。
葛藤している間に葵琉はさっさと写経を提出して無言で帰ってしまった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
42 / 70