アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
俺のストレス解消法-6
-
「はぁ……」
モヤッとした感情が抜けないまま写経を纏めていると葵琉が座っていた席にブレザーが掛けられているのが目に入った。
外に出たら寒いから流石に気付いて取りに来るだろう。
椅子に掛けられたブレザーを綺麗に畳んでギュッと抱き締めると仄かに香水が薫る。
空気を思いっきり取り込むと、もう冬も目前だというのに身体が真夏のように火照りだす。
空蝉でさえこんなに心も身体も熱く燃え上がるんだ。
「愛してる……葵琉」
何もかも失うのと引き換えに、あの場で思いっきりお前を抱き締められたらどんなに良かったか。
俺が良くてもお前は困るかな?
なぁ、葵琉?
――ガラッ。
ドアの開く音がして慌ててブレザーを放して机に置いた。
入って来たのは予想どおり葵琉だった。
一直線にさっき座っていた席へと向かうと、机の下や引き出しを除き込んでいる。
「これだろ? 忘れ物」
「あ……」
ブレザーを回収しようとする手首を掴むと葵琉の肩がビクッと跳ねた。
何だよ。
俺に触れられるのも嫌になったのか。
火照っていた頭から血の気がスーッと引く感覚があったが、手を放すつもりはなかった。
「週末は何処に泊まったの?」
金曜日、生徒会室のソファーに家の鍵を忘れて行っていた。
この週末は葵琉のご両親は揃って旅行に出ていたし、合鍵は俺が持っているから家に入れなかった筈だ。
「俺の知ってる人?」
「……うん」
誰だ?
知っている相手で葵琉を泊める人間の心当たりを探す。
「鞘?」
「違う」
「虎太郎?」
「違う」
「悠夜兄さん?」
「何で悠夜おじちゃん」
呆れたような笑いだけどほんのちょっとでも表情が生まれた事にホッとしてしまう自分を笑いたくなった頭に、ある可能性が思い浮かんだ。
「まさか月灯に泊めてもらった?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
43 / 70