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天翔演武-1
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葵琉と出会って3回目の春を迎えて俺は沢井流大学に進学した。
今まで昼休みと放課後は葵琉と常に一緒に居たが俺が高校を卒業したら今までみたいに毎日は一緒に過ごせなくなる。
建物同士は目と鼻の先にあるとはいえ少なくとも日中は別れ別れの生活だ。
しかも学校が終わったら俺には初級クラスの稽古がある。
「お前が沢井流にでも入れば夕方からは一緒に過ごせるのにな」
冗談で言った俺の言葉をまさか真に受けるとは思わなかった。
「じゃあ入る」
厳しい沢井流の稽古に葵琉がついて来れるとは思っていないが、それでも目の届くところに置いておきたい一心で初級クラスに入門を許した。
葵琉が入門して数ヵ月が経った頃、昇級・昇段試験のシーズンがやってきた。
試験前になると俺の祖父である道場長が練習を見に来るので教える側も教わる側も緊張感に包まれている。
今回俺も昇段が懸かっているので1秒たりとも気が抜けない。
「遅れてすいませーん」
道場内のピリピリした空気を破るように帯を結びながら足で障子を開けて入ってきた葵琉に、その場が凍りついた。
馬鹿……今日はいつもの稽古と違うから来るなと言ったのに。
ただでさえ礼儀に厳しい道場長の前で障子を足で開けるなんて言語道断だ。
そしてその責は葵琉の師である俺に全部被ってくるわけで……。
「申し訳ありません。僕の監督不行き届きです」
俺の謝罪を気にも止めず祖父は出ていった。
はぁ……昇段オワッタ。
もうため息しか出ない。
別に沢井流に骨を埋める気はないから昇段はどうでもいいが、年に1回の試験に向けて調整してきた練習が不意になったのは正直辛い。
まぁ、こうなったら受け持ち生徒の指導に残りの時間を費やすか。
とくに葵琉とか葵琉とか葵琉とか……。
あいつは初の試験だからな。
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