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天翔演武-2
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昇級試験までの日々は飛ぶように過ぎていった。
生徒へのご褒美として持たせるお菓子の詰め合わせを受け取りに行くのを忘れそうになるというアクシデントもあったが、悠夜兄さんが機転を利かせてくれて助かった。
そしてやってきた試験当日、俺は自分の受け持ち生徒の面倒をみるのでいっぱいいっぱいだった。
見てやらなければいけないと思いながらも、つい葵琉の相手を悠夜兄さんに任せっきりにしてしまった。
「シロ……」
「悪い、今手が離せないんだ」
せめて葵琉の演技前には声を掛けてやりたかったのに、俺の受け持ち生徒の一人が緊張で型の順番を忘れて教えている間に時間がなくなった。
幼稚園児を教えながら対岸に目をやると、悠夜兄さんが口を付けたペットボトルを葵琉に手渡すところだった。
あ……間接キス……。
男同士だし深い意味はないから気にする事はないんだろうけどモヤッとする。
その時、悠夜兄さんがこっちに目を向けてニヤリとした。
「!?」
兄さんは葵琉の首もとに手を回すと、ネックレスを外した。
それだけでなく、悠夜兄さんは葵琉の帯も外させた。
ロッカーから取り出して来たのは年季の入った白帯で、葵琉は匂いを嗅いで何か言っている。
会話の内容はわからないが、憮然とした悠夜兄さんの表情から察するにあんまりいい事は言ってなさそうだ。
俺の方を向いた悠夜兄さんは何故か愉快そうな表情になって葵琉と二言三言会話を交わしている。
「あ!」
次の瞬間、目に入った光景に思わず声が出た。
ザワザワとした稽古場の中でも側にいた俺の生徒の耳には届いたようだ。
「志朗せんせ~どうしたの?」
「何でもないよ、ごめん」
葵琉の頭を撫でてそのまま胸に抱き込んだ悠夜兄さんの意図が読めなくて胸が焦げた。
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