アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
天翔演武-3
-
悠夜兄さんに限って、葵琉に手を付けるような事はないと信じている。
だけど、やっぱり心配で気が付くと二人の姿を目で追っていた。
「志朗先生、この次内受けだっけ? 支え受けだっけ?」
「どっちも違う! 挙げ受けだよ!」
「志朗~、賞状の箱どこ置いた?」
「おかみさんの部屋です!!」
こんな時に限って生徒やら役員やらあっちこちから声が掛かる。
バタバタと動き回っているうちに葵琉の出番がやってきた。
声を掛けてやりたかったのに、同時に演技する受け持ち生徒が気がかりで葵琉の元に行きそびれてしまった。
大丈夫かな、あいつ。
葵琉の方に目をやると悠夜兄さんが両肩を掴み、目を合わせて声を掛けている。
葵琉もそれに応えるようにしっかり目を合わせて頷いている。
フィギュアスケートのリンクサイドさながらの光景に胸がチリっと焦げた。
本当は、葵琉の面倒をみてくれている兄さんに感謝しなきゃいけない所だ。
だけど、それよりも抑えきれない感情が前へ前へと出しゃばってくる。
駄目だ、集中しなくては。
今から生徒たちの演武を見届けなければならないんだから、そんな個人的な感情は拭い去らなければ。
悶々と悩む俺の事など目もくれずに葵琉は稽古場の中央へと進み出た。
本番の第1課題は基本の突きや受けなどの技を披露する。
日頃の練習の甲斐あってこれは全員難なくクリアした。
続いて行われたのは、得手不得手が如実に表れる型の審査だ。
これは、二人ずつ同時に演技を行い、トップバッターには葵琉と幼稚園児の名前が呼ばれた。
二人とも滑り出しは順調だった。
あ……。
葵琉と同時に表演していた幼稚園児が緊張で順番を忘れたのか棒立ちになった。
演技中は静かに見守らなければならないが、稽古場の中にどよめきが起こる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
52 / 70