アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
天翔演武-4
-
大丈夫かな……葵琉。
隣で演技する選手の失敗は動揺に繋がり、ミスの連鎖を招きかねない。
だけど、葵琉は他の選手の失敗にも会場の空気にも流される事なく綺麗に纏めた。
1本目の演武が終わったらそのまま2本目に突入する。
他の生徒も見なければならないのに、葵琉にばっかり目が行ってしまうのが周りのギャラリーにバレていないかドキドキする。
頑張れ、葵琉!
声には出せないけど心の中で懸命に声援を送っているうちに、2本目の演武も無事終了した。
型が終わったら次は板割りだ。
白帯の課題である正拳突きでの板割りを葵琉は1発ですんなりとやってのけた。
最終課題の約束組手も練習通りにバッチリ決まって、周りに気取られないようそっと胸を撫で下ろした。
これで葵琉が挑んだ初めての昇級審査は無事終了となる。
良かったな。
チラッとこっちに目を向けた葵琉に、周りには気付かれないよう小さく頷いた。
今度こそは俺の所に帰ってくるだろう。
そう思って、掛けてやりたい言葉を幾つも用意していたのに葵琉は向こう岸に戻ってしまった。
両手を広げて待っていた悠夜兄さんの所に行って固く抱き合っている。
「!」
葵琉の背中越しに覗く悠夜兄さんの口角が上がった。
勿論、教える側と教わる側というだけの関係で他意はないと思いたい。
だけど葵琉が俺以外の人間とくっついているのがどうしても我慢ならないのだ。
父兄も見てますから。
特定の生徒を贔屓しているように見られるのはよくないので。
だからあまり、くっつかない方がいいです。
そう言いに行こうと決心して一歩踏み出した。
「志朗せんせー」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
53 / 70