アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
天翔演武-5
-
悠夜兄さんの方に行き掛けて、後ろから道着の裾を引っ張られた。
「?」
振り返ると次に演技をする青帯の生徒が困り顔で立っていた。
「せんせー、2個目の型の真ん中らへん忘れたー」
「真ん中?」
「うん。裏拳のあと」
これ~、この後と小学生の生徒は裏拳を打ち込んで見せる。
「あ、わかった。この次な」
手本を見せようとしたら、白帯の表彰式が始まるとのアナウンスが入ったので生徒を連れて廊下に出た。
「あら、志朗。暇だったら賞状の用意手伝ってくれない?」
「無理。俺も猫の手を借りたいほど忙しいんだよ」
他の流派は後日結果発表という所もあるようだが、沢井流の昇級・昇段審査は即座に結果が渡される。
級証・段証に毛筆で名前を書き込むのはうちのお袋の役目なのでこの日は本当に忙しい。
「只今より白帯の結果発表を~」
進行役の役員の声を合図に、ザワザワとしていた稽古場が静まり返る。
葵琉の表彰式も見てやりたいけど、本番前の生徒が最優先だ。
青帯の生徒に型を指導して送り出したら今度は黄帯の生徒がやってくる。
「志朗先生! 帯結んで~」
「結べてるだろ」
「だって右と左で長さが違うんだもん」
沢井流では身嗜みも採点項目に入ってくるので、帯が正しく結べていないと減点対象になる。
「俺が結んでやるのは今日が最後だぞ! 緑帯に上がったら自分で出来なきゃ駄目だからな」
「わかった~」
はい、出来たよと頭を一撫でして会場に送り込む。
その後も本番が控えている自分の生徒を送り出したりしている間に葵琉と悠夜兄さんの姿は見えなくなっていた。
全員の出番が終わって、周りにいた生徒に聞くと悠夜兄さんが葵琉の手を引いて出ていったらしい。
いったいどこに……。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
54 / 70