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天翔演武-8
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年が明けて、葵琉も無事に沢井流大学への進学が決まった。
「シロ、あの約束覚えてる?」
「約束?」
「ほら、ネックレスがバレなかったら旅行に連れてってくれるってやつ」
そう言って葵琉は制服の首元からネックレスを取り出して見せた。
「もちろん覚えてるよ、どこ行くか考えておけよ」
「うんっ!」
俺も葵琉も、この時はまさか高校生活の最後にあんな出来事が待ち受けているなんて思ってもいなかった。
入門クラスの稽古を終えて5時半からの初級クラスまでの時間に紅茶で一服しようと一旦部屋へと戻って来た。
自宅と稽古場が隣接しているのは煩わしくもあるが、こうして自室で休憩できるというのが俺にとって一番のメリットと言えるかもしれない。
葵琉はどうしているかな?
過保護だと言われようと本人に多少ウザがられていようと可愛い恋人の動向は気になるもの。
電話を掛けてみるも呼び出し音がするばかりで一向に出る気配がない。
遊びにでも行ってるかな。
俺が稽古で忙しい時は時々虎太郎と出掛けているようだ。
沢井流の心得もある虎太郎にならば安心して葵琉を任せられる。
スマホを机に置こうとすると同時に鳴り出した着信音に思わず取り落としそうになり慌てて受け止めた。
葵琉からだと思ったが、画面を見ると発信元は鞘だった。
鞘から電話が掛かって来たのは高校時代を通しても数えるほどだった。
この春から俺の居る沢井流大に進学が決まっているから大学の事で何か聞きたいのだろうと軽い気持ちで電話に出た。
「志朗さん!! 大変なんです!!」
耳に飛び込んできたのはいつも冷静沈着な鞘の狼狽えた声だった。
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