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天翔演武-9
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「もしもし? 鞘?」
「……先輩が……で……」
「え?」
鞘のすぐ近くで言い争うような声が響いていて肝心の話が掻き消される。
「もしもし? 今どこ?」
「……ぶどうじ……」
「鞘? もしもし?」
通話の途中で電話が切れてしまって、すぐにかけ直したが繋がらない。
『ぶどうじ』で思い当たったのは学校の「武道場」だ。
沢井流の関係者でもない鞘が何でそんな所に居るのかわからないが、通りすがりに喧嘩にでも巻き込まれたのかもしれない。
とにかく行ってみなくては。
初級クラスに遅れるかもしれないと伝えるべく道場に向かおうとしたら、タイミングよく自分のクラスが終わって母屋の風呂に入りに来た兄弟子を掴まえた。
「悠夜兄さん!」
事情を話すと悠夜兄さんは「俺が初級クラスやってやるから早く行け」と言ってくれた。
走りながら電話を掛けるなんて器用な事をするよりも、その分全力で走った方が要領がいい。
「志朗さん!!」
武道場の建物の前で大きく手を振っているのは鞘だった。
「鞘!!」
「来てください! 志朗さん!!」
武道場に着くや否や血相を変えた鞘に腕を引っ張られ、靴を脱ぐのもそこそこに中へと転がり込んだ。
武道場の中には高校の制服を着た人垣が出来ていて、何かを取り囲んで口々に大声を張り上げている。
ヒートアップした人垣に近寄ると、武道場の真ん中で囲まれているのは二人の男だった。
ジャージ姿の男を、道着を着たもう一人が見下ろしている。
「沢井先輩!!」
沢井先輩だ。
沢井先輩が何で?
そんなざわめきが耳に届いたのか、真ん中の二人が振り向いた。
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