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天翔演武-10
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「志朗兄さん!!」
「……沢井」
「虎太郎……と、桐島先輩?」
床にへたりこんでいるのは、俺の2代前に風紀長をしていた桐島先輩だった。
何があったのか説明を求めるまでもなく、二人を取り囲んでいた3年生たちが今に至る経緯を口々に話してくれる。
沢井流大学から風紀検査の手伝いで来ていた桐島先輩が葵琉に狼藉を働いたのが事の発端だった。
「狼藉?」
桐島先輩が葵琉の前髪を掴んで眼球に突き刺したと聞いて、自分でもよく目の前の男に飛びかからなかったと思う。
沢井流で鍛えた忍耐力がなければ、とっくにこの男を顔の形が変わるまで殴っていただろう。
「葵琉は?」
「生指部長が瀧川医院に運び込みました」
「容態は!?」
「簡単に診たところ、ちょうどコンタクトの上に当たったみたいで傷は付いていないと言っていました。今、精密検査をして貰っています」
「そう」
ちょっとでも当たり所が悪かったら、大事に至っていた。
人に拳を向けたい。
それは生まれて初めて覚えた感情だった。
「で、今のこの状況は」
葵琉と生指部長が出ていって残された生徒たちはこの男に飛び掛かろうとした。
それを制した虎太郎にこの男は「沢井流で勝負だ」と宣った。
「俺は沢井流習っててあと半年居たら黒帯だったんだよ」
そう言い放って虎太郎に飛びかかった男は一瞬にして制圧されていた。
「……わかった」
へたりこんでいる男の顔面に足の裏をお見舞いしそうになるのをギリギリの所で押さえてゆっくりと頷く。
「俺が居ながら……すみませんでした」
「家にお連れして」
直角に頭を下げる虎太郎の頭を上げさせて、騒動を起こした張本人を沢井家へ連行するように命じた。
「制裁は、悠夜兄さんの役目だから」
私怨による決闘で『沢井流』を持ち込むなど言語道断。
沢井流を騙ったからには罰も沢井流で受けて貰う!!
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