アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
天翔演武-12
-
「もう入ってもええ?」
入り口の柱と同化していた銀がようやくぴょこんと顔を出した。
「なあ悠夜くん。この花瓶、本当に30万もすんの?」
「知らね」
憎い相手とはいえ、学生に30万もの大金を払わせるのは酷だ。
「でもな、これおかみさんのお気に入りだぞ」
「……」
「あと、この花生けたのユキだぞ。今日は珍しくうまく生けられたって言って三味線教室終わったらブログに上げる写真撮りにくるとか言ってたな」
「……」
普段は滅多に怒らないうちのお袋と次兄が怒った時のエネルギーは半端じゃない。
「これ、片付けんでええの?」
「とりあえず、隅に寄せといて後であいつが戻ってきたら接着剤で元通りにくっつけさせようぜ」
接着剤で……。
それは一体何日掛かるのか。
「誰に手え出したのか身をもって知って貰わないとな」
ニヤリと笑った悠夜兄さんはポケットからスマホを取り出した。
「俺、葵琉くんだけは絶対敵に回さへん!!」
「あ、虎太郎か? 葵琉の容態はどうだ? あ、うん。わかった」
精密検査でも目には問題はなくこのまま帰宅出来ると聞き、胸を撫で下ろす。
「で、そこが終わったら今度はそいつを本家に連れてって、おかみさんとユキに花瓶の事謝らせてから武道場に戻って花瓶の修理な」
電話を切った悠夜兄さんは今度は俺の方に顔を向けた。
「俺、今から銀と焼き肉行くからついでにあいつ迎えに行ってやるよ」
「沢井くんも一緒においでや」
「俺?」
「この前お馬さんでいっぱい勝ったんや~」
結局、虎太郎と葵琉も一緒に行く事になり、悠夜兄さんの友達の大学生と6人で焼き肉を囲んだ。
どんだけでも頼んでええよと豪語する銀を葵琉は羨望の眼差しで眺めている。
「俺も競馬やろっかな」
「馬券は20歳からやで、葵琉くん」
「どの口が言ってるか!!」
楽しそうに焼き肉をつつく葵琉の姿を見ると今日の嫌な出来事はとっくに何処かにやってしまったようで安心した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
61 / 70