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天翔演武-13
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入門してから2年と半年、1級の赤帯までは順調に取ることができた葵琉だが、初段の昇段試験は今までのようにはいかなかった。
基本演武も型も得意な葵琉だったが、組手だけは昇段試験の試合相手である虎太郎になかなか勝つことができない。
色帯の間は受からせる試験、黒帯からは落とす試験と言われている。
葵琉の場合、組み手がネックとなって合格に赤信号が灯っていた。
『一度チャレンジして駄目だったらきっぱり諦める』
そう宣言して臨んだ試合だったが、やはり幼い頃から猛稽古を積んできた虎太郎には歯が立たなかった。
「明日から自由の身だーっ!!」
宣言通り沢井流を退会した葵琉だったが、練習がなくなっただけで沢井家に入り浸るのは以前と変わらない。
むしろ遊ぶ時間が増えたと喜んでいる葵琉だが、相当無理しているというのは薄々感付いていた。
表面上はこうやって繕っているが明らかに元気がない。
そんな葵琉を見るに見かねた俺は元気付けるいい方法はないかと情報収集に取り掛かった。
なかなかいいアイデアが浮かばないまま部屋に戻ると、たまたま点けたテレビでフィギュアスケートの試合をやっていた。
空手とスケートと競技は違うものの、型の鍛練をする参考になることもあって注目していた。
今やっているのは男子のフリースケーティング。
難度の高いジャンプを当然のようにプログラムに組み込む時代の中で、ジャンプだけに囚われず観客の心を掴む選手が居た。
これだ!!
葵琉には、技術だけでなく演技の美しさで人の心を打つような選手になって欲しい。
葵琉の演武はまるで空を翔る鳥が憑依したような躍動感に満ちていて、細かい手さばきが極めて美しいとジャッジからも高評価を得ている。
「俺の手で新しい流派を創設する」
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