アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
天翔演武-14
-
新しい流派を創設するといっても、今日や明日いきなり出来るわけではない。
まずは練習場所を確保するところからだ。
そんな折、沢井家の末寺の住職に欠員が出たと祖父から伝えられた。
「今は奏雪に住職の代行をさせているが、あいつもなるべく早く後釜を見つけてほしいと言うからお前にどうかと思ってな」
本山は長兄が継ぐが、ユキと俺もこのような時の為に僧籍は取らされていた。
「檀家さんも居ないお寺だからそう仕事も大変ではないぞ」
それこそ、朝晩のお勤めとか、お守りの販売とか、境内に居着いた三匹の猫の餌やりとかそんな程度だという。
葵琉、猫好きかな?
「あれだ、ほら何ていうんだ? か、かふ、かふ」
「カフェ、ですか?」
「それだ。そのカフェとやらをやってもいいし、空手教室を開くことも出来るぞ」
俺の紅茶好きは祖父も勿論知っていた。
紅茶専門店を開きたい。
それがずっと温めて来た俺の将来の夢だ。
今は「葵琉といつまでも平和に暮らしたい」という夢が勝ってきているが。
「これもお前に訪れた仏縁だろうよ」
道場長の立場としては、本当は沢井流を継いで欲しかったというのは知っている。
ただ、孫を持つ一人の祖父としてはこうして俺の夢にも理解を示してくれていた。
「沢井流はな、儂が隠居したら悠夜のものだ。だけどな、分派としてお前が何かやるのは自由だぞ」
正式に悠夜兄さんが流派を率いるようになれば、俺はここに残るべきではないだろう。
悠夜兄さんは居ればいいと言ってくれるだろうけど、俺に付いている道場生にとって頭が二人いるのはやりにくい。
「やります」
末寺を引き受ける事になった俺は卒業後に紅茶専門店「沢庵」を開業し、葵琉を講師に「天翔演武」の教室を開設することを決意した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
63 / 70