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天翔演武-15(完)
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「ふーん」
最初は他人事のように冷めた目で見ていた葵琉だったが、天翔演武の具体案が煮詰まってくると次第に興味を持ち出した。
「何かさ、鳥をモチーフにした演武って女子っぽくない?」
「そうだな」
意外と女性の生徒が集まるかもしれない。
そこで、女性クラスを受け持っているルミさんにもアイデアを出して貰った。
「なかなか生徒さんが集まらない時代に、エクササイズクラスを作ったら人数が倍に増えたのよ」
その言葉にヒントを得て、女性にも受け入れられやすいエクササイズの要素を含むレッスンの構成を取り入れた。
「空手のエクササイズなら三味線の音楽に合わせてやってみたら?」
「いいな、それ!」
空手の発祥地は琉球王国だ。
沖縄の音楽に合わせて体を動かすのも雰囲気が出ていいだろう。
うまいことに三味線ならうちにはプロがゴロゴロしている。
「衣装も付けたらどう?」
ルミさんがスマホで様々な表演服を探してくれた。
「帯の代わりに紅型の布を巻くのは?」
「何かさ、扇子とか槍とか持ってやるのは?」
「シロとペアの型やりたい」
練習後に行うミーティングは白熱して深夜まで及ぶ事もあった。
初演の日が決まり、会場は沢井流大学の講堂を手配した。
衣装や手具は沢井流と契約している用品店に発注して、三味線の演奏はユキの力を借りて教室の生徒さんにお願いした。
そして当日。
「楽しんで演れよ」
「うん!」
記念すべき初舞台のトップバッターを務めるのは、勿論葵琉だ。
「それでは只今より、天翔演武の――」
アナウンスを合図に緞帳がスーっと上がり、舞台の中央に葵琉が現れた。
舞台袖で控える俺と目を合わせてそっと頷く。
三味線の前奏が始まり、葵琉の持つ扇子が翻った。
(完)
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