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《よざくら》わさびもち-2
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青年の長ったらしい話を要約するとこうだ。
桜の花びらと葉っぱが必要で、まずは桜の花びらをタッパー一杯に集めて冷蔵庫にしまっておいた。
ようやく葉桜の時季になったので、今度は桜の木に登って葉っぱを採集するためにやってきた。
「そしたら下りれなくなっちゃったんですー」
小さい頃から木に登るのは得意だったはいいけど下りるのは苦手だった。
じゃあ何で登ったんだよ……と突っ込みたかったけど話が長くなりそうだから飲み込んでおいた。
それでですね、と青年の話は続く。
「まあいいやー、どうやって下りるかは葉っぱ集めてから考えよ~」
下り方は二の次。
とにかく葉っぱを採集することにした。
桜の花びらが既にタッパーいっぱい詰まっているけど、そこに葉っぱも一緒に入れようと蓋を開けた。
ところが……タッパーに開けた途端花びらがぶわっと飛び出して地面に撒き散らしてしまった。
あ!
ヒラヒラと舞い落ちていく花びらを反射的に追い掛けてしまいバランスを崩す。
落ちそう……落ちる……落ちる……落ちたーっ。
そしたら木の下には俺がいた――という説明を長々と聞かされた。
「花びらもみんな落ちちゃいました」
青年は名残惜しそうに足元に撒き散らされた花びらを見つめるが、拾って使えないのか、それ?
「桜の花びらと葉っぱ集めて何するんだよ」
「桜餅を作るんですー」
「ほう」
何で桜餅に桜の花びらが要るんだ?
料理は付け人にさせればいいというスタンスの俺でも、桜餅に花びらを使わない事ぐらいは知っているぞ。
説明させてみると、どうやら餅に桜の花びら混ぜて葉っぱを巻いたら桜餅が出来ると信じているみたいだ。
「家に料理出来る人は居ないのか?」
「地方から出てきたので大学の寮で一人暮らしてるんです」
こんな危なっかしいやつに親御さんもよく一人暮らしさせたもんだな。
「桜餅に桜の花びらは要らないだろ」
「だって桜餅ですよ。ピンク色してますよー」
「食紅だよ」
「しょくべに?」
これこれこーゆーの。
スマホで食紅の画像を見せてやったが、茶色い小瓶とピンク色の餅が頭の中でうまく結び付かないようで首を傾げている。
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