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《よざくら》わさびもち-6(完)
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手洗いに立って戻って来た瞬間、テーブルの上の光景に違和感を覚えた。
増えている。
俺の分の餅が増えている。
わさびもちは俺が見て分かるよう他のより多く盛り付けてあるから一目瞭然だ。
「何か増えてないか?」
「気のせいでしょう」
ぬけぬけと答える志朗の涼しい顔を見て疑惑が確信に変わった。
恐らく一部始終を目にしていたであろうルミが隣に座る利桜に何やら耳打ちする。
「食えない兄弟よね」
「え? あのお二人は兄弟なのですか!?」
「兄弟子と弟弟子なの。あのギリシャ彫刻と血が繋がってるのは私」
「えーっ!? 悠夜さんは彫刻だったんですか!!」
いつから人間になったんですか? どうやって人間になったんですか? と目をキラキラさせる利桜にルミもタジタジだ。
「いただきます」
「美味しー」
「すごいね、これ利桜くんが作ったの」
「はいっ!!」
ほう。
お前の常識では、他人が8割がた作ったものでもお前の手柄なんだな。
ああ、そうか。
お前の腹はよくわかった。
「いただきます」
志朗が手を合わせた隙に皿を交換してやった。
「兄さん」
「何かな」
困惑したような志朗に確実にわさびもちを食べさせるべく利桜をけしかける。
「ほら、利桜。志朗先生にあーんしてやったらどうだ?」
「はい!」
「志朗先生、お口を開けて下さい!」
どうだ、志朗?
純真な目の破壊力は。
しぶしぶ口を開ける志朗の姿に勝利を確信して、ワラビ餅を口に運ぶ。
「っ!!」
一かけら口に入れた途端ワサビのツーンとした刺激が鼻に抜けて涙が滲んだ。
諮りおったな志朗!
「あれ? 兄さんお顔の色がよろしくないようですが」
「そうかな。ちょっと風邪気味でね。良かったら俺の分も食べてくれ」
小皿ごと志朗の前にドンと追いやる。
「いえいえ、風邪の時ほどこういった消化にいいものをお召しにならないと。利桜くん、悠夜先生にあーんしてあげてくれるかな?」
「はいっ! 悠夜先生、お口あけてください」
「志朗~~~っ!!」
(完)
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