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鈴川 まってて
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「失礼します」
保健室の扉を開けると桜井先生が空を見上げていた。
「どうしたの?、また聞きたいことでもあるの?」
話してくれるけど、こっちは見てくれない。
「恋人に振られたんですか?」
「そうじゃないよ、付き合ったって報告されただけ。少し前に別れたよ。」
しってる。鎌をかけただけだからな。
それよりもなんなんだよ。ほんと鬱陶しい。
俺と先生が出会ったのは俺の男子校に先生が来た時だった。自分からは話しかけない性格で友達はいなかった。だんだん周囲から馴染めない俺をみんなは邪魔者扱いして、聞こえるように悪口を言っていた。
その日は日直で先生から宿題を回収するように言われていた。みんなのぶんを回収し職員室に持って行こうと廊下に出て歩いているとクラスの男子に足をかけられ、コケてしまった。
みんなこっちを見て笑っている。だれも助けようとはしない。
そんなもん慣れっこだ。みんな俺を無視し続ける。ずっと1人だった。家に帰ってもいるのは召使いだけ。金で雇われたただの人間だけ。母親は仕事で忙しいし父親は海外出張がほとんどで家にはいなかった。誰からも愛情を注がれなかったから人との接し方がわからないままでほんとは心の底から誰かに助けて欲しかった。
「大丈夫か?」
ぼーとして紙を拾っていると声が聞こえた。たぶん隣の女子高の先生だろう。担任からは来ると聞いていたから大体は想像できた。
「手伝おう。大変そうだから」
初めて誰かに声をかけられた。胸が熱くなる。ずっと待ち望んでいた一言がやっと聞けた。たった一言だけれど助けられた気がした。
それから先生は一部始終を見ていたらしく学校に訴えてくれた。自分が言うよりも説得力があったらしく二日後にはクラスのみんなが謝りに来てくれた。
あの先生のお陰で今の自分がある。だから感謝と尊敬と好意が混じった感情を先生に持っている。大好きだよ
「三上先生」
あの時の三上先生の言葉は忘れられない。なんとしてでも俺のものにする。
あの時ショッピングモールで見た時のことは忘れられない。あんな幸せそうな顔見たことない。今からあの笑顔は俺だけのものにしてあげる。
「待っててね、三上先生」
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