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帰ってきたエース(余談)
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ある男は毎日体育館を覗いては、ため息をつき、その場を後にする。
図体や髭も多少生えており、端から見るならその男は「不審者」だ。
今日も放課後練に顔は出さず、こっそり緩く開いたドアから見るだけ。
そこには知らない一年が四人ほどいて、益々入りづらくなる。
男は何度目かわからないため息をついて、中の様子を見るのをやめた。
これだけ未練があるのに、バレーをすることを怖がる。
男も数ヵ月前までは、烏野排球部の「エース東峰旭」を努めていた。
成人並みの体格を持ち合わせたその強靭な肩からは、有無を言わさない豪速球の強打が繰り出される。
しかし、旭の弱点は「心(メンタル)」。
度重なるブロックに捕まり、心が折れてしまったのだ。
三枚でブロックのマークにつかれ、真正面からぶち抜いたとして、ドシャッと捕まるのがおち。
それが怖くて、軟打やフェイントという逃げを繰り返し、いつしか。
打てなくなったのだ。
自信のないエースはエースではない。
烏野に必要とされてない。
そんな気がして、部活にいけなくなった。
中では旭がいた頃と変わらず、同級生の澤村が声を張り、部員たちが練習しながら和気あいあいとしている。
「10分休憩ー!」
「うぃーす」
澤村が号令をかけた。
旭は慌ててドアから体を離し、部員たちが来る前に渡り廊下を渡って__。
「旭さん!!」
大きな声で叫ぶように呼ばれ、びくりと肩が跳ねる。
ゆっくりと振り向けば、憤然とする西之谷が肩にタオルをかけて立っていた。
そのタオルも、旭とお揃いのタオルだ。
一番会いたくない人に、一番最初に声をかけられるのだから、旭の悪運はとことんついてないのである。
旭はもう苦笑いをしながら徐々に後退り、渡り廊下を渡りきるしかない。
「旭さん、ちょっと」西之谷がずかずかと旭との距離を縮め、腕をつかんで校舎裏へと回る。
そのあとこの「エース東峰旭」は復活を遂げるのだった。
西之谷がどんな手を使ったなどは、暗黙の了解として一年に教育された。
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