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春、4月中旬。
3月に高校を卒業した俺は、1ヶ月ほど前に一人暮らしを始めた。
高校時代の国語の先生で俺の恋人の涼さんと家が近いこともあり、週に2、3回遊びに来る。今日も…。
「…お邪魔します」
「はいどうぞ」
涼さんと一緒に晩御飯の準備をするのも、慣れてきた。
「そういえば、隠し事は嫌だから言っておくね」
野菜を切りながらぽそりと言う。
「今日、1年生の女の子に一目惚れしたって言われた」
「…えっ」
思わず涼さんの方を振り向くと、何事もなかったかのように作業を続けている。
…急に不安になってしまう。
いくら、好きになったら性別は関係ないという涼さんでも、本当に俺が恋人で良いのかな、とか…。
性別が関係ない分、涼さんの恋愛対象になりうる人はかなり多いわけで。
そもそも、たくさんの高校生相手に仕事しているわけで、その中で何で俺だったのか…
…嬉しさよりも不安が込み上げてきた。
「…圭斗?」
「あっ、はい…?」
「大丈夫、恋人がいるって言ったから」
勇気を出して伝えてくれてありがとう。嬉しいです。
でも、僕には好きな人がいて、その人も僕のことを好きでいてくれるんです。
申し訳ないけど、僕には大切な恋人がいるので。
そう伝えたと教えてくれた。
大切な恋人。
嬉しくてくすぐったい言葉だけど…
俺に似合うのかな、その言葉。
「…大橋先生、覚えてるよね?」
「はい」
「今年、僕とデスク隣なんだけど…実は少し前、大橋先生に訊かれたんだ。…松下くん、最近いいことあった?…って」
「え?」
切った野菜を炒めながら言う。
「忍ぶれど 色に出でにけり 我が恋は ものや思ふと 人の問ふまで」
…また、和歌だ。
涼さんは古典が好きで和歌も得意だけど、古典が苦手だった俺には全然分からない。
恋という単語は聞き取れたけど。
「…意味は?」
「心に秘めた私の恋心は、表に出てしまっていたようだ。人に恋でもしているのかと尋ねられるほどに。」
分かりやすく要約するとね、と付け加える。
「自分じゃ気づいてなかったけど、僕、浮かれてるみたい」
涼さんの笑顔が眩しい。
嬉しい…けど、それは俺が涼さんに釣り合う恋人だって理由にはならないよ…
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